2009年10月2日金曜日

同名異国


2 つのサモア


今回のマグニチュード 8.3 の大地震と津波によって大きな被害を受けたサモア。被害を伝えるニュースでは「サモア」と「アメリカ領サモア」という言葉が使われています。紛らわしいのですが、この二つは別々の地域を表しています。

「サモア」は、「サモア独立国(Independent State of Samoa)」が正式の名称で首都はアピア。19世紀にサモア諸島を植民地化するに際して、ドイツ、イギリス、アメリカが対立。ドイツが領有することになった西サモアがこの国の起源です。第 1 次世界大戦でドイツが敗れたことによってニュージーランドの委任統治領となり、第 2 次世界大戦後には同国の信託統治領となりましたが、1962年に「西サモア(Western Samoa)」として太平洋諸島中で最初に独立、さらに 1997年に国名を「サモア独立国」に改めました。

もう一方の「アメリカ領サモア(American Samoa)」はその名が示すとおりアメリカ合衆国の海外領土で、中心都市はパゴパゴです。植民地争奪戦の結果、アメリカ領とされた東サモアがそのまま続いています。


2 つのコンゴ

コンゴ共和国(Republic of Congo)」と「コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)」があります。

「コンゴ共和国」は、かつては黒人が支配していた「コンゴ王国」の領域です。フランス領赤道アフリカのコンゴ州となりましたが独立。一時期「コンゴ人民共和国(People's Republic of the Congo)」と称していましたが、その後「コンゴ共和国(Republic of Congo)」となっています。首都はブラザビルです。

もう一方の「コンゴ民主共和国」は、19世紀にベルギー国王レオポルド 2世の私領となり、その後ベルギーの直轄植民地となっていました。1960年にベルギーから独立、コンゴ動乱が起こりました。国名は、「コンゴ共和国」→「コンゴ民主共和国」→「ザイール共和国」→「コンゴ民主共和国」と変遷しています。首都はキンシャサです。


2 つのドミニカ

ドミニカ共和国(Dominican Republic)」と「ドミニカ国(Commonwealth of Dominica)」があり、ともにカリブ海に面しています。前者は大アンチル諸島、後者は小アンチル諸島にある独立国です。サモアやコンゴと違うのは、この 2つの国が遠く隔たっており、まったく隣接していない点です。この二つの国の間には 10近い国や地域が存在しています(それらの国名は、オリンピックの入場行進か国際捕鯨委員会(IWC)でしか目にする機会がないと思います)。

前者「ドミニカ共和国」は、フランス、スペイン、隣国ハイチ、アメリカなどの支配を受けてきました。その後のトルヒーヨ(トルヒーリョ)将軍・大統領による独裁政権が長期間続いたことで、この国を記憶しておられる方も多いのではないでしょうか。首都はサント・ドミンゴです。

後者「ドミニカ国」はイギリスの植民地、自治領を経て独立しました。首都はロゾーです。この国は火山島であるため、滝や温泉や豊富で植物の種類も多く、島全体が〈カリブ海の植物園〉と呼ばれるそうです。カリブ海諸島の原住民カリブが現存する唯一の国でもあるとのことです。

太平洋と比べると、大西洋にはプレートの沈み込み帯がほとんどありません。大西洋にある沈み込み帯は、南極大陸と南アメリカ大陸の間にある南スコシア海溝と、カリブ海の東方にある小アンチル海溝(プエルト・リコ海溝)だけです。小アンチル海溝では、おおよそ東から西に向かって大西洋の海底が沈み込み、バルバドスリッジと呼ばれる大きな付加体が形成されています。ドミニカ国が日本と同じような火山島で温泉が豊富なのは、この沈み込み帯に面しているためと考えられます。