2010年3月30日火曜日

ヒキガエルの繁殖行動とラクイラ地震

昨年 4月 6日にイタリア中部の都市ラクイラ(L'Aquila)とその周辺を襲った M6.3 の地震では、300人にせまる死者が出ました。この地震の前からヒキガエルの繁殖行動が大きく変化していたという報告が、ロンドン動物学会の機関誌 『Journal of Zoology』(動物学ジャーナル)に掲載されました:

ヒキガエルは、何らかの地震前兆シグナルを察知して、行動を繁殖モードから避難モードに変えるようです。

以下に記事をまとめます:
ラクイラ地震の 5日前までにオスのヒキガエルの 96% が繁殖地を放棄した。この繁殖地は、地震の震源地から 74km のところにある。地震の 3日前には、この繁殖地でのつがいの数が 0 になった。

本震の発生以降、M4.5 を超えるものとしては最後の余震が起こった日までの間、この繁殖地では新しい卵が見つからなかった。

ヒキガエルの繁殖地ではオスが多数を占める。通常、ヒキガエルは、繁殖行動が始まってから産卵が終わるまでは繁殖地にとどまる。

ヒキガエルの行動の変化は、VLF(超長波: 周波数 3kHz~30kHz、波長 100km~10km の電磁波)を使った観測によって検出された電離層の擾乱と同時期に起こった。

電離層の擾乱の原因は確定できなかった。

ヒキガエルの行動に影響するその他の環境要因として、月の位相や気象条件の変化も検討された。研究対象となった繁殖地では、ヒキガエルの繁殖が満月の期間中に増えることが知られていた。しかし、地震発生以降、満月の時期に現れたヒキガエルの個体数は、前年までは 67個体から 175個体の間であったのに対して、34個体であった。

報告の主執筆者である Rachel Grant 博士は、自分たちの研究は、地震発生前、余震継続中、そして余震収束後の全期間にわたって動物の行動を記録した最初のもの(one of the first)だと位置づけ、「ヒキガエルは、ガスや荷電粒子の放出などの地震前兆シグナルを感じとることができ、それを地震の早期警報システムとして使っていることを、われわれの発見は示唆している」と語っています。


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