2008年2月27日に観測史上 2番目の規模の「大」地震があったイギリスでは、国民が地震の情報に敏感になっているようです。先ごろ、イギリスと NATO 諸国合同の定期軍事演習「ジョイント・ウォリアー」の一環として行われた掃海訓練について、海軍が非難されています。原因は、イギリス海軍が同国本土近海で行った機雷処理演習です。海底に敷設された機雷を無害化する過程で発生した爆発(複数)が、イギリス本土の地震計ネットワークに記録されたとメディアが伝えたところ、国民の安全を守るべき軍が地震を起こすとは何事か、地震計に記録されるような爆破は規模が大きすぎるのではないかといった非難や疑問が軍に寄せられました。
以下は、BBC が伝えた記事です:
記録された「地震」のマグニチュードは、1.1、1.5、1.9 でした。
これに対して、海軍が反論を発表しています。訓練の必要性を強調するとともに、英国地質調査所(BGS)の観測機器が非常に鋭敏だから地震として記録されたにすぎない、という内容です:
この海軍の発表のなかに、おもしろい情報が含まれています ―― 大型の手榴弾の爆発は M0.5、建設現場の騒音は M1.0、第2次世界大戦中に使用された爆弾の爆発は M1.5 に相当するのだそうです。
地震多発地帯の日本人にとっては何ともない無感地震ですら、一般市民の間では「軍がおこした地震」になりかけたわけです。このようなことがうわさとなり、尾ひれがついて、最終的には「軍は地震兵器を保有している」というトンデモ話になるのかも知れません。
なお、1番目の記事で BGS の職員が語った次の言葉は重要です:
Looking at the squiggly lines, as we call them, we were 99% sure they were explosions because they have different characteristics from an earthquake. (波形を見て 99% 確実に原因が爆発であるとわかった。なぜなら、自然の地震とは異なる特徴をもっていたから。)地下核実験の振動波形も同様です。爆発現象による振動と自然の地震では、波形の特徴が異なります。私のような素人にも理解しやすい特徴は、縦波と横波の振幅の違いです。自然の地震では、ご存知のように縦波(P波)より横波(S波)の震幅の方が大きくなりますが、爆発現象では逆に縦波(P波)の方が大きくなる傾向があります。これは、地震では断層が食い違うという、モーメントをともなう(ねじれるような)運動によって主要なエネルギーが放出されるのに対して、爆発現象では、爆心から外に向かって押す力が振動を引き起こすためです。前者は波の進行方向に対して直角の振動(つまり横波)、後者は波の進行方向と同じ方向に振動する疎密波(つまり縦波)となります。地震の原因が爆発だと考える人は、このような基本的な事実がわかっていないのかも知れません。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency