2009年1月13日火曜日

ペルセポリス作戦

イスラエルがガザ地区へ地上軍を投入したことで中東は騒然としていますが、その少し前、『アル・アラビアというニュースサイトが以下のような記事を掲載しています。もともとは、アラブ首長国連邦の『NATIONAL』というメディアに12月14日付で掲載された記事のようです:
イランの核開発に危機感を募らせるイスラエルは、すでに、国連決議などの外交手段や経済制裁などでイランに核開発を放棄させることは不可能と判断していると言われます。イスラエルには、1981年にフランスの支援で建設中のイラクの原子炉を奇襲攻撃して破壊した「前歴」がありますので、イランに対しても同様の奇襲を仕掛けるのではないか、とみられています。

上の記事は、もしイスラエルがそのような攻撃をイランに対して仕掛けたら、その後どのような影響が出るかをシミュレーションした架空の記事です。記事では、このイスラエルによる攻撃を「ペルセポリス作戦」と呼んでいます。これは、1981年のイラクの原子炉に対する攻撃が「バビロン作戦」(別名オペラ作戦、オフラ作戦)と呼ばれたことに倣ったものと思われます。バビロンはイラク領内の古都です。イラン領内でそれに匹敵する知名度の古都といえばペルセポリスしかない、ということで選ばれたのだろうと思います。

なお、架空記事の日付は「2010年2月29日」となっていますが、2010年は閏年ではないので、その日は永久にやって来ません。

上記架空記事によると、ことの発端は以下のとおりです:
2010年2月27日土曜日、イスラエルが「ペルセポリス作戦」と名付けた軍事行動を決行、イランの核関連施設を攻撃した。この作戦でイスラエルは無人機を使用、イラン中部の Natanz にあるウラン濃縮工場と、ペルシャ湾岸の Bushehr 原子力発電所を攻撃、破壊した。第一撃によって、数万の遠心分離装置を稼働させていたと推定されるウラン濃縮施設内で、少なくとも19人の作業員が死亡。ロシアが建設した Bushehr 発電所については情報がない。
そして、「ペルセポリス作戦」後の世界の動きが述べられています(以下は記事の概略です。各段落のタイトルは私がつけたもので、もとの記事にはありません。):
バグダッド発、2010年2月29日月曜日  イスラエルの攻撃がもたらす結末はどうなるのだろうか ……

ホルムズ海峡封鎖・原油高騰

日量1700万バレル、世界の原油供給量の25%が通過するホルムズ海峡を、イランのエリート組織・革命防衛隊が封鎖。これが中東にさらなる緊張の高まりをもたらし、ニューヨーク商品取引所の取引では、原油価格が1バレルあたり163ドル上昇して228ドルになった。

アメリカ

イランに隣接するイラク領内に4万5000人の部隊を駐留させている米国が、この攻撃を事前に知っていたのか、同意を与えていたのかは明らかになっていない。イスラエルの報道によると、イスラエル国防軍はかなり前から、イランの原子炉に対する精密誘導兵器による攻撃を検討していたとされるが、ペンタゴン(アメリカ国防総省)との連携は除外されていた。バラク・オバマ大統領は世界の指導者たちや、国土安全保障省と国防省の長官たちと協議中と伝えられているが、今夕にもイスラエルを公に支持する声明を発表するものとみられている。

EU・国連・ロシア

EU の大統領を務めるベルギーの Yves Leterme 首相は、イランのアフマディネジャド大統領と最高指導者ハメネイ師のもとへ高いレベルの使節団を派遣。使節団には、イギリスの David Milliband 首相、国連の潘基文事務総長も加わっている。使節団は、イスラエルの不当な武力行使を非難し、イランの自制を求める報道声明を発表した。イラン政府は、イスラエルの攻撃後、同国の軍隊に高度の警戒態勢をとらせているが、明日に予定されているプーチン・ロシア大統領(首相から大統領に復帰?)の訪問を待ってから、報復行動に移るものとみられている。

在留外国人の避難

一方で関係各国は、破壊された Bushehr 原子力発電所に近い湾岸アラブ諸国から自国民を避難させるための大規模な空輸作戦を準備している。日曜日には、湾岸諸国で在留外国人が領域外へ脱出するための航空券を求めて空港に詰めかけたが、多くの航空会社が湾岸アラブ諸国への飛行を取りやめている。湾岸地域に多くの在留国民を抱えるインド政府は、すべての政府所有航空機と民間航空機が、自国民の湾岸アラブ諸国からの輸送にあたるよう命じた。

親欧米派の湾岸アラブ諸国には 1200万人の外国人が在留している。駐留米軍は高度の警戒態勢に入っている。サウジアラビアは、650万人におよぶ最大の外国人居住者を抱えている。それに次ぐのは、アラブ首長国連邦で500万人。これは同国全人口の80%に相当する。

食料高騰・株価急落

湾岸諸国の市民は食料品の確保に殺到。買い占めにより食料品の価格は急上昇した。ダウ・ジョーンズを筆頭とする欧米株式市場の急落をうけて、投資家からの売りが殺到、今朝の取引開始時点で17%下落したため、株式市場は閉鎖された。

イラン国内

日曜日にテヘランで開かれた200万人大行進と名付けられた集会で、アフマディネジャド大統領は熱弁をふるい、彼が「卑劣なシオニスト集団」と呼ぶイスラエルに対して報復し、地図の上から消し去ることを誓った。イラン全土で散発的に抗議運動が発生、デモ参加者たちは、国家が持てるすべての軍事力を使って、イスラエルと湾岸地域に展開する米軍の基地を破壊するよう要求している。

イラクの過激派

イラクの扇動的な聖職者アル・サドル師の影響下にある民兵組織のスポークスマンは、匿名を条件に、次のように発表している: イラク政府の同意の有無にかかわらず、イランが敵(イスラエル)の国境に近い戦略的地点を確保できるよう支援する方向だ。同様の支援表明ステートメントは、ハマスとヒズボラからも出されている。

イスラエルの核

イスラエルのネタニヤフ首相は、今日ホワイトハウスでオバマ大統領とペルセポリス作戦の影響について会談するが、「イスラエルは国家の総力を挙げて第二のホロコーストの可能性を除去する」と語っている。ネタニヤフ首相は、もしイランが報復におよんだ場合、核兵器の使用を検討するかとの問いに対して、核の存在について否定も肯定もせず曖昧なままにしておくという同国の方針を維持して、コメントを拒否している。アメリカのカーター元大統領は、かつて「イスラエルは少なくとも150発の核兵器を保有している」と語っている。

イランの軍事力

ペンタゴン(アメリカ国防総省)は、イランには徴兵制があり、イラン政府は少なく見積もっても約2000万人の兵員を動員できると推定している。これは、同じく徴兵制のあるイスラエルの総人口の4倍にあたる。

今年前半におこなわれた軍事パレードで、イランは「シャハブ4」大陸間弾道弾を公開している。これは、核弾頭搭載可能で射程2300km、イスラエルの全都市が射程内に入る。昨日、イラン軍部のスポークスマンは、射程1000kmの「ゼルザル4」ミサイル(ゼルザルは地震の意)を、「テルアビブ・ゼルザル」(テルアビブはイスラエルの都市、同国の人口の約3分の1が集中)と改名することを発表した。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency