先日、都内のレストランで小・中学校時代の同期生たちと夕食をともにしながら、雑談に興じていたときのこと、全国で続くオタマジャクシ落下のことが話題に上りました。原因について、鳥説・つむじ風説・いたずら説などひとしきり盛り上がったあと、一人が「これはひょっとすると音楽関係者、それもかなりの大物が死ぬ前印(まえじるし)かも知れんね」と言ったのです。彼の発想は単純で、「オタマジャクシ → 音符」から連想したものでした。
前印(まえじるし)という言葉は、あまり一般的ではないかもしれません。しかし、私と同期生たちにとってはさほど珍しい言葉ではありません。私と同期生たちが通っていた学校は、ローマン・カトリック系の教会によって設立されたもので、小学校からキリスト教の教理の授業がおこなわれており、その中で「前印」という言葉は何度か耳にしたことがありました。うろ覚えですが、どういう文脈で使われるかというと:
ノアの箱船が漂うことになった大洪水。それをもたらした長雨は 40日 40夜続いた。これは、その後、洪水が 40日 40夜続くことの前印。昨夜、件(くだん)の友人と電話で話したときには、「オタマジャクシ」という言葉の中には「マイケル・ジャクソン」という名前が隠れていると自慢されてしまいました。彼によると、「オタマ」の「タマ」は「玉」で丸い、「丸」の「マ」と「ル」は「マイケル」を暗示、「ジャクシ」は「ジャクソン」に通じる、云々。後付け、こじつけもここまで来ると辟易します。このようにして迷信や都市伝説が誕生していくのでしょうか。
モーゼに率いられてエジプトを脱出したイスラエルの民は、荒野を 40年間にわたってさまようことになった。これは、イエス・キリストが悪魔の誘惑を受けながらも荒野で断食した期間が 40日 40夜であったことの前印。
ネット上では、すでに〈実はマイケルは死んでいない、偽装だ〉とか〈某秘密組織に暗殺された〉という類の隠蔽説・陰謀説が出ています。エルビス・プレスリーが死んだあとも、長期間にわたって〈エルビスは生きている〉〈○○でエルビスを目撃〉といったニュースがタブロイド紙を中心に繰り返し報じられました。マイケル・ジャクソンについても、同じような現象が尾を引くことになるのかも知れません。