今月は、8 日(月)午前 3 時 12 分に満月になります。毎年この時期、つまり夏至(今年は 6 月 21 日)の前後の満月は赤く見えることが多く、地震前兆関係の掲示板でも「月が赤い」という報告が増えるようです。これは、梅雨どきで湿度が高いことなどの気象条件の影響もありますが、天文学的な要因が大きく関係しています。その要因とは、この時期の満月の南中高度が低いということです。
南中とは月が真南に来ることで、月が東から昇り西に沈むまでの間で最も高度が高くなる瞬間です。南中高度とはそのときの地平線から月までを測った角度(仰角)です。この南中高度が低いということは、月が昇ってから沈むまで、ずっ低い位置を移動することを意味しています。
月が高い位置にあるときと、低い位置にあるときとを比べると、後者の方が月の光が、より長く大気圏を通過して人の目に届きます。大気は月の光を散乱させます。特に波長の短い青系統の光が散乱されやすいので、目に届くときには波長の長い赤系統の成分がより多く残っていることになります。この散乱作用の影響は、大気を通過する距離が長いほど強くなり、赤みが増します。高度が低いほど、月は赤く見えやすいということです。これは、高い位置にある昼間の太陽と比べて、低い位置にある夕日が赤く見えるのと同じ理由です。なお、国立天文台の下記ページにもわかりやすい説明があります:
なぜ夏至の前後には、満月の南中高度が低くなるのでしょうか。その理由を図を使わずに文章だけで説明するのは難儀ですので、この拙文を読んでくださっている方々の “food for thought” として残すことにします。ヒントとしては、夏至の時期には、北半球では太陽の南中高度が年間で最も高くなることに着目してください。満月の高度が低くなるのはこれと裏腹の現象ということです。
月についての話題をもう一つ。日本が打ち上げた月周回衛星「かぐや」が間もなく月面に落下します。「落下」というよりは、制御された衝突と言った方が適切です。現時点での衝突予測は、日本時間 6 月 11 日 3 時 30 分頃、月の表側で月の南極に近い場所となっています。衝突の際、地球から閃光が観測できるかも知れないとのことです。ひょっとしたら双眼鏡程度でも見えるのではないかと私は期待しています。衝突時刻や場所は今後変化する可能性があります。詳しくは JAXA (宇宙航空研究開発機構)のサイトを参照してください: