2010年12月17日金曜日

ハッブルの天体写真 2010

『ボストン・グローブ』紙の “ザ・ビッグ・ピクチャー”が、今年もハッブル宇宙望遠鏡の写真集を始めています。12月 1日からクリスマスの 25日まで、毎日 1枚ずつ新しい写真が追加されていきます:

冒頭の渦巻きの写真については、このブログの 9月 7日付記事「宇宙の暗い渦巻き」を参照してください。

私が惹かれるのは 4番と 9番の写真です。無数の島宇宙が写っており、宇宙の広大無辺さを感じさせてくれます。子供のころ読んだ本にあった 「有限な人間の心は、無限の宇宙を理解できない」 という言葉が思い出されます。

4番の写真には、重力レンズの効果によって筋状に引き伸ばされた島宇宙の姿がいくつも見えています。

もう一つ、忘れてはならないのが 11番です。木星の上空に浮かぶ衛星イオと、木星の表面に映るイオの影です。スケールの大きさに圧倒されます。

同じような趣向の写真として以下もご覧ください。火星の衛星フォボスが火星の表面を背景に映っています。ハッブル宇宙望遠鏡ではなく、ESA(欧州宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが撮影したものですが、センス・オブ・ワンダーを感じさせるすばらしい写真です。

フォボスは、その奇妙な軌道と密度の低さから、中空の人工天体ではないかと考えられたり、薄い金属板で作られた人工物ではないかとの説が出されたりしたことがありました。詳しくは以下をお読みください:

ハッブルのウェブサイトでは、今年もクリスマスカードの素材を提供しています:

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2010年12月16日木曜日

黒い砂

「黒い砂」ってまるで松本清張の推理小説のタイトルにありそうですが、12月 15日に湘南地域などに降った黒い砂の正体は何なのでしょうか:
  1. 神奈川・湘南地域に黒い砂降る? 人体に影響はなし
  2. 湘南に謎の黒い砂降る 県西部含め13自治体に

砂粒の大きさはおおよそ 0.1mm ということで、黄砂などと比べると一桁から二桁ほど大きく、大気中にそれほど長期間漂っていたとは考えられません。比較的近距離から飛来したか、上空から落下してきたかでしょう。

12月 14日に出現の極大を迎えた「ふたご座α」流星群の火球がまき散らした流星塵かとも考えましたが、粒子の直径が大きすぎますし、何よりも量が多すぎます。また、そのような火球の目撃情報もありません。

報道によれば黄砂の飛来、火山の噴火、工場事故などはなかったということです。『朝日新聞』の記事(上掲 1)では、専門家が「成分を見ると、何かの焼却灰のようにも思える」と指摘しています。

『東京新聞』の記事(上掲 2)には、「(神奈川)県内では今年四月、北西部の山北町で黒い砂が降ったとの情報が県に寄せられたが、砂を採取できず、原因は分からなかった」との情報が載っています。山北町は、今回も黒い砂が降った地域に含まれています。

群馬大学の火山学者・早川由紀夫教授のブログには、「富士山の表面をつくっている黒い軽石(スコリア)の細粉が強風で飛ばされたものだろう」との見解が示されています:

関東ローム層は富士山の噴火のときに降り積もったと思い込んでいましたが、「噴火しなくても富士山から砂が巻き上げられて関東平野に降り積もる事例が日本社会の記憶に残るといい。これが何度も繰り返されれば、関東ロームが富士山の噴火で降り積もったと誤解する人はそのうちいなくなるだろう」とのことです。

2010年12月15日水曜日

宇宙の巨大リング

まず、以下の図を見てください。中心部の小さな円とそれを囲む 2つのリング。NASA の WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe、ウィルキンスン・マイクロ波非等方性探査衛星)が観測した宇宙マイクロ波背景放射のデータに現れた巨大なリング状のパターンです:

このパターンは、イギリスの高名な数学者・宇宙物理学者・理論物理学者であるロジャー・ペンローズ博士と、アルメニアのエレバン物理学研究所・エレバン国立大学の Vahe Gurzadyan 氏が 11月 16日に報告したものです。

以下は、上記の報告をかみ砕いて解説している記事です:

以下に、上記記事から摘記・意訳します:
ペンローズ博士たちが報告したリング状のパターンは、天球上の全方向からほぼ等方的に放射されていると考えられている宇宙マイクロ波背景放射の中に見いだされた。宇宙マイクロ波背景放射は、ビッグバンの名残であると考えられ、ビッグバン宇宙論の有力な証拠とされている。
リング状のパターンは、宇宙が始まりと終わりを繰り返していることを示している、とペンローズ博士たちは考えている。

リング状の領域は、宇宙マイクロ波背景放射にあるわずかな温度のばらつきが平均よりも小さい部分である。

このリング状のパターンは、現在定説化しているインフレーション宇宙論では説明できない。インフレーション宇宙論では、生まれたての宇宙が、その直後に原子のサイズからグレープフルーツのサイズに急激に膨張したとしている。このようなインフレーションが起きていたとすれば、今回発見されたリング状のパターンは消されてしまうであろうし、インフレーションによってリング状のパターンが生成されるとは考えられない。

プリンストン大学の宇宙論学者 David Spergel 氏は次のように語っている: 「このような形状の、巨大なスケールで一貫した特徴がマイクロ波背景放射に存在するということは、インフレーション・モデルと矛盾し、宇宙が誕生と死滅を周期的に繰り返すというペンローズ・モデルの非常に特徴的な証拠であると考えられる。しかし、ペンローズ博士たちが発表した論文には、このリング状のパターンが実際に存在するか否かを検証するための詳細情報が十分には記載されていない。

一番最近に起きたビッグバンの前に存在した宇宙(ペンローズ博士はビッグバンによって区切られる個々の宇宙を “aeon” と呼んでいる)の情報をこのリング状のパターンが見せていると解釈している。

このリング状のパターンはビッグバン以前の宇宙で発生した超巨大ブラックホールどうしの衝突によって形成されたのではないか、と博士は示唆している。衝突したブラックホールは重力波(巨大な質量の加速によって生起する時空のさざ波)の「不協和音」を発生させのではないか、というのである。発生した時空の波は球状で均一に分布していたはずである。

ペンローズ博士の計算によれば、均一に分布した重力波が一つ前の aeon から現在の aeon に入るとエネルギーのパルスに変貌する。このパルスは、この宇宙の全質量の 80% 以上を占めるとされる目に見えないダークマターに対して均一な力を及ぼす。これが、マイクロ波背景放射に見られるかなり均一なリング状のパターンとして観測される。

ペンローズ博士たちは、WMAP の観測データに加えて、気球によってマイクロ波背景放射を観測した BOOMERANG 実験 のデータも解析し、同様のパターンを見いだした。2つの異なる観測装置のデータに同様のパターンが見つかったことから、観測機器のノイズやその他の人為的な要因によってこのようなパターンが現れた可能性は低い、とペンローズ博士たちは考えている。
宇宙マイクロ波背景放射については、ESA(欧州宇宙機関)のプランク・ミッションによってさらに詳細な観測データが集められている。ペンローズ博士は、自分の理論がこのデータによってさらに決定的に検証されるであろうと考えている。

このペンローズ博士たちの報告については、すでに批判や反論が出ています。その一つは上記記事中にも少し書かれていますが、WMAP の観測方法がリング状のパターンの原因ではないか、とするものです。WMAP の観測では、天球上の観測場所によって観測時間に差があります。観測時間が長い場所ほどノイズの影響が小さくなり、観測データに現れるマイクロ波背景放射の温度のゆらぎが小さくなります。このようなゆらぎの少ない部分がリング状のパターンの原因ではないか、それをペンローズ博士たちは自分たちの「周期的な宇宙」論に牽強付会しているのではないか、というものです。


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2010年12月11日土曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 23)

エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)周辺とカトラ山周辺では、現地時間 12月 5日 20:23 に M0.4 の地震が発生して以降、地震がまったく発生しない状態が続いています。今年 3月にエイヤフィヤトラヨークトル氷河の下で火山噴火が始まり、4月末に隣接するカトラ山で地震が起き始めて以降で、このように静穏な状態が 5日以上継続するのは初めてのことです。

このまま地震と火山の活動が終息に向かうのでしょうか。それとも、 「嵐の前の静けさ」なのでしょうか。


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2010年12月10日金曜日

ドラゴン宇宙船に極秘の積荷

アメリカのスペースX社が日本時間 12月 9日に商業用ロケット「ファルコン 9」で打ち上げた 7人乗り(今回は無人で打ち上げ)宇宙船「ドラゴン」は、地球を 2周したのち、大気圏に再突入して無事に太平洋に着水しました。民間企業としては初の快挙です:

このドラゴン宇宙船には「極秘」の積荷が載せられていたのですが、その中身が明らかになりました:

民間企業ならではというところでしょうか。この積荷の謂れは、往年のテレビ番組 「空飛ぶモンティ・パイソン」 まで溯るようです。


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東南海地震と最近の小地震パターン

今朝の『朝日新聞』科学面に 「東南海 最近の小地震パターン 1944年大地震前と似る」 と題する記事が掲載されていました。防災科学技術研究所の調査結果を紹介しているのですが、当該記事が現時点ではネット上に見つからないので、以下に紙面から抜粋します:
  • 東南海地震の震源域での小地震の発生パターンがこの 10年、1944年に起きた大地震の直前の 10年間に似てきた。
  • 前回の東南海地震までの 10年間に震源域で起こったマグニチュード 3.5 以上の地震の発生傾向を、最近の 10年間と比較した。その結果、双方とも 51~90年の 40年間に比べ、志摩半島南側などで地震が増え、逆に渥美半島先端などでは減少。最近の傾向は、前回の直前と似ていることが分かった。
  • 震源域には固着の強い部分と弱い部分があるが、弱い固着が徐々にはがれ、大地震の直前には強く固着した場所にエネルギーが偏ると考えられている。この偏りの影響で、大地震の前に震源域周辺で起こる小地震の発生パターンも変化するとみられる。

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2010年12月7日火曜日

カンピ・フレグレイに火山活動の兆候 ― イタリア

イタリアの有名な観光地・ナポリは 2つの火山にはさまれています。東に 15km ほど行ったところにはヴェスヴィオ山。西暦 79年に噴火し、ローマ帝国の都市ポンペイを火砕流で、またヘルクラネウム(現エルコラーノ)を土石流で埋め尽くしたことで有名です。一方、ナポリの西にはカンピ・フレグレイ(Campi Flegrei)と呼ばれる幅 13km のカルデラが広がり、多くのクレーターが分布しています(地図)。

このカルデラの西端にあるアヴェルヌス湖(Lake Avernus、地図)の地下で、12月 6日午前 7時 30分から 8時にかけて、マグニチュード 4.8、4.8、5.6、5.7 の地震が相次いで発生しました:

アヴェルヌス湖の内部には、火山爆発指数(VEI) 7 クラスの噴火をおこす可能性のある火口があり、今回の連続地震はその火山活動が始まったことを示しているのではないか、と上記記事は伝えています。1558年には、この湖の南東岸にある火口(Monte Nuovo)が噴火し、一つの集落が壊滅したとのことです。

2010年12月6日月曜日

X-37B が帰還

12月 3日 午前 1時 16分(現地時間)、アメリカ空軍の無人スペース・プレーン X-37B がカリフォルニア州にあるバンデンバーグ空軍基地に着陸しました。4月 22日に打ち上げられてから 225日(約 7ヶ月)ぶりの帰還です:

空軍の担当者は、軌道上で予定されていたすべての目的を達成した、と述べています。

以下の記事には、着陸時の動画(暗視カメラの映像)や、着陸後の様子を撮した写真が掲載されています:

動画には、X-37B が滑空しているところは含まれておらず、着陸後に滑走路上を移動しているところしか写っていません。目撃者の少ない深夜を選んで着陸したことと合わせて考えると、滑空する様子に何か秘密があるのかも知れません。

X-37B の機体のそばに人が写っている写真を見ると、同機のサイズがいかに小さいかわかると思います。貨物室は小形のピックアップ・トラックの荷台と同程度の大きさといわれており、そこに太陽電池パネルも収納していることを考えると、大きな積荷は搭載できないことがわかります。

作業をしている人が防護服を着ているのは、機体に残っている燃料が有毒であるためだとのことです。


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エルタアレ山から溶岩流出 ― エチオピア

エチオピアのエルタアレ山(Erta Ale、地図)の山頂クレーターにある溶岩湖は、今年初め頃から徐々に湖面が上昇していましたが、11月 21日から 23日にかけてストロンボリ式噴火とともに溶岩があふれ出したとのことです:

エルタアレ山は、粘性の低い溶岩によって形成された平たい盾状火山です。理科年表(丸善書店)には、「1967年より溶岩湖常在」との記載があります。

このブログの 11月 15日付記事 「紅海南端部-アデン湾最奥部で群発地震」 で記しましたが、エルタアレ山から南東に約 350km 離れたアデン湾では 11月 14日から数日にわたって浅い地震が多数発生しています。

また、アデン湾に面するソマリランドでは、11月 22日から 23日にかけての深夜に強い地震が発生しています。下記記事によれば、1980年代初頭以来最大級の地震であるとのことですが、同地域には地震観測計器が設置されていないので、マグニチュードなどは不明です:

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トゥングラワ山が噴火 ― エクアドル

エクアドル領のアンデス山中にあるトゥングラワ山(Tungurahua、地図)は、 11月 22日にいきなり噴煙を 7000m を超える高さまで噴き上げて人びとを驚かせましたが、12月 4日になって溶岩の流出をともなう本格的な噴火を始めました:

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