2013年3月8日金曜日

箱根山群発地震と富士山噴火


今年1月中旬から始まった箱根山の群発地震に関して、琉球大理学部名誉教授・木村政昭氏の発言がマスコミに取り上げられることが増えています。マスコミといっても『東京スポーツ』や『週間実話』なども含まれますが。

「箱根山の地震は富士山の活動の影響を受けている」、「1989年に手石海丘で噴火が起きて以来、既に20年あまり経っています。噴火活動が南から北へと上がっており、箱根はともかく、富士山で噴火活動がいつ起きても不思議はありません」:

「震災以降、富士山は噴火口直下の小地震が多くなり、また震源が浅くなってきている。富士山真下のマグマが上昇してきて、周囲にプレッシャーをかけている」:

「箱根山はもちろん活火山のため群発地震はよくあり、それだけで噴火が近いと判断するのは早計かと思いますが、1カ月で1300回は少し多い。マグマは、南の三宅島の方から押してくるのですが、三宅島も三原山も既に噴火しているだけに箱根山が噴火しても不思議ではありません」:

木村名誉教授は九州での大地震発生についても発言しています。「東日本大震災で三陸沖のストレスが取れた結果、太平洋プレートが南に押してくる圧力が強まって、桜島、新燃岳などの火山活動が活発化していると思われる。注意しなければならないのは内陸地震です。歴史を見てもわかるように90~95年まで続いた雲仙普賢岳噴火の真っただ中に阪神淡路大震災が発生し、その1年後の96年、日向灘地震が発生した。これは単なる偶然ではありません」:

私は以前から木村氏の説に興味を持ち、著書もかなり持っているのですが、木村氏は「同業者」には必ずしも評判が良くないようです。『日本の火山を科学する』(神沼克伊・小山悦郎、サイエンス・アイ新書、2011;書評)の中には、名指しはしていないものの、木村氏を指弾したとみられるコラムが掲載されています。以下にその一部を引用します:
ある学者は、伊豆大島や三宅島が噴火すると、かならずといっていいほど「太平洋岸で近い将来大地震が発生する」と自説をマスコミに対して展開します。日本列島内に被害をともなうような地震が起こると太平洋岸に大地震が発生する、あるいは富士山が噴火するというような情報を発したことも少なからずありました。しかし、そのような学者が年2回開催されている火山学会や地震学会の春・秋の総会で、そのような研究成果を発表するのを聞いた記憶はありません。マスコミには発表するが、研究成果の評価を受けるべき関係学会では発表していないのです。 
メディアに対して「伊豆大島が噴火したから近い将来大地震が発生する」というような話をしますと、ほとんどは大々的に報じられます。その報道は一過性ですから、伊豆大島の噴火が沈静化すれば、大地震発生の発言も忘れられてしまいます。メディアもその報道を検証することは、ほとんどありません。 
次の火山噴火や地震が起こると、また同じ発言が繰り返されています。さらに発言はエスカレートして、どの地震や火山噴火を指しているのかわかりませんが、「私が以前に予知したように火山活動が活発になっているから、大地震が起こる可能性が高い」というような発言になります。

長いコラムなのでかなり割愛しましたが、最後は次のように結ばれています:
「火山噴火が起きたから、大地震が発生する」、あるいはその逆も証明されていません。すべては自己顕示欲の強い学者がマスコミ相手に流した「たわごと」なのです。

「出る杭は打たれる」ということなのでしょうか。少なくとも、木村氏はマスコミの望むような(発行部数増につながるような)発言をしてくれるので、マスコミに重宝されているという面があるのは確かだと思います。


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