3月8日付「箱根山が山体膨張 ― 神奈川県 (続報-7)」の続報です。
なぜ、この時期にと思うのですが、箱根山について「安全宣言」ともいえる文書が発表されました。下記の記事(朝日新聞)によれば、気象庁と神奈川県温泉地学研究所が主体となって出された文書のような印象を受けますが、実際は「箱根火山対策連絡会議事務局」(箱根町総務部総務課)というところが要求・主導したのではないでしょうか。地元の利害に配慮せざるを得ない県の研究所はともかく、気象庁までがこのような文書を掲載するというのも意外な印象を受けます:
春休みや春の観光シーズンを控えた週末前の金曜日にこのような文書が出されたというのも、なんだか意味深長です。まさかとは思いますが、その裏には観光業界の圧力があって、今後、気象庁や温泉地学研究所の箱根山に関する情報公開が何らかのバイアスを帯びたものになる、あるいは自粛して限定的・消極的になる、などということがないように願いたいものです。情報を隠せば隠すほど疑心暗鬼を生み、観光業者が最も恐れる風説が広がります。
箱根町のサイトに掲載されている3月8日付「安全宣言」文書:
神奈川県温泉地学研究所のサイトに3月8日付で掲載された文書。最後の段落を除いて、箱根町が掲載している文書と同一です:
気象庁のサイトに3月8日付で掲載された文書(全18ページ)。1ページ目は箱根町の文書と同一です。2ページ目から3ページ目にかけて、観測事実や過去の事例が簡潔にまとめられています:
- 箱根山の活動状況についてのお知らせ (PDF形式)
以下は、上記気象庁の文書にある「観測事実」からの抜粋です:
2013年1月初旬から微小な地震活動が観測され始め、1月中旬頃からやや増加し始めました。その後、2月10日と16日などにやや大きめの地震が発生しましたが、2月18日頃からは地震活動が収まりつつあります。
今回の地震活動で、気象庁が情報発表に用いている湯本の震度計で震度1以上を観測した地震はありません。温地研が独自に大涌谷に設置した震度計では、これまでに震度1~3相当の揺れになった地震を合計10回程度観測しています。
上記の地震活動は深さ0~4km程度の浅い場所で発生しています。ですので、地震の原因はマグマの直接の影響ではなく、地下深部の変化の影響を間接的に受けたものです。
これらのことから、現在は噴火を心配するような状況にはありません。ただし、浅い微小な地震は熱水や火山性ガスの上昇が関係して起きていることも考えられます。それらが、局所的でも地表に現れた場合には、注意が必要です。
以下は、同文書の「過去事例」からの抜粋です:
この中では、2001年の活動が最も規模が大きく、今回よりも多くの地震が観測されました。また、地殻変動量も大きく、地震活動の期間中に大涌谷の蒸気井の暴噴が生じたほか、地震活動が終わった後に上湯場で噴気・地熱地帯の拡大などの変化が現れ、今も継続しています。
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