心理学者の宮城音弥・東京工業大学名誉教授(故人)に『神秘の世界 ―超心理学入門―』(岩波新書 435、1961)という著書があります。この中に「未来の予知」という章があり、未来を予知することについて「ふつうは、それが不可能だと考えられている」が「未来を予知したという人がいないわけではない」として、その原因を3つの類型に分けています。
第1は、記憶の錯誤や既視感。第2は、予想が偶然に的中するケース。ふだん、人間は様々なことを予想して行動する。たとえば交通事故に遭いはしないかなど。「このうちに偶然的中するものが出てくるのは当然であろうし、われわれは的中したものだけを取り上げて、的中しなかったものを忘れてしまいやすい。」
第3は、予知のように見えるが、実際は現実の認知であるケース。以下に引用します(精神分裂病は現在は統合失調症と呼ばれています):
精神分裂病者と思われるある青年が、伊豆の大地震を予知したことがあった。彼は、前日に、電報でそれを気象台か大学の研究室に知らせた。これは、ナマズなどある種の動物が地震を予知するような行為をするのと同様なもので、すでに出現している地震の前兆(地殻の微かな変動とか地電流の変化とか)を認知したと解釈できるであろう。
この「精神分裂病者と思われるある青年」がどのようにして地殻の変動や地電流の変化を認知したと考えているのか、宮城氏は何も書いていません。ナマズを引き合いに出していることから、この青年が精神分裂病者であるがゆえに、何らかの前兆を体で感じ取った(いわゆる体感)ということなのでしょうか。
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