2012年6月29日金曜日

阿蘇中岳で赤熱現象 (続報-3)


5月20日付「阿蘇中岳で赤熱現象 (続報-2)」の続報です。

気象庁が6月29日付で発表した『週間火山概況』によると、阿蘇山(地図)中岳第一火口の火山活動が高まっているとのことです:

上記資料から阿蘇山中岳第一火口に関する記述をまとめると:
  • 火山性地震および孤立型微動が、2月ごろから増加傾向。
  • 火口の湯だまり量は減少、表面温度は上昇 ―― 湯だまり量は4月中旬までは9割、5月には6割、6月中旬には3割まで減少。表面温度は4月上旬は60℃程度、4月中旬頃から上昇し、6月上旬から70℃以上の高温状態が続く。
  • 南側火口壁の温度も昨年11月ごろから上昇傾向。


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磐梯山で火山性微動


気象庁が6月29日付で発表した『週間火山概況』によると、磐梯山(地図)で「25日05時22分頃に、継続時間約45秒の火山性微動を観測」、「火山性微動を観測したのは2009年6月9日以来」とのことです:

火山性微動は、地下のマグマの動きによっておこるとされ、マグマだまりの振動,火道中のマグマやガスの振動,溶岩の流動と噴出などが原因と考えられています。


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地震前兆現象調査へ ― 高知県黒潮町


6月13日、高知県黒潮町(地図)の町長が町議会での答弁で、地震前兆現象の調査に前向きな考えを示したとのことです。「実効性は不明だが、有識者の意見を聞きながら検討したい。複数の自治体が研究に取り組めば、観測精度の向上が期待できる」(町長):

高知県では、県レベルで「研究者や地域住民にこれまでの異常現象に関する聞き取り調査を行うと共に、県のホームページ上で実際に起きている異常現象などを随時報告してもらってそれを県民が共有できるようなシステムを作っていく」ことを知事が県議会で表明、また、同県須崎市(地図)でも地震前兆情報を市が収集して市民に提供し、自主避難を促す目安として生かすことを決めています。黒潮町もこの流れに乗ることになるわけです。

このように前兆情報を収集する場合には、いくつかの課題があります。1つ目は「悪貨は良貨を駆逐する」問題。これは、3月6日付の「科学的裏づけ無くても情報収集 ― 高知県」に書きました。

もう一つは、風評被害の問題です。公的機関が前兆情報を収集し公開する場合は特に問題となるでしょう。実際に前兆の可能性がある現象が現れ、もうじき地震が起きるのではとの不安が住民の間に広まった場合、地元の経済活動に影響が出る恐れがあります。また、そのような情報はインターネットを介してあっという間に日本中に伝わるでしょう。特に懸念されるのは観光産業へのダメージです。前兆現象を収集している高知県、須崎市、黒潮町のみならず、隣接県や周辺市町村の自治体や業界団体から前兆情報の公開について有形・無形の圧力が加えられる可能性があります。

そのため、前兆情報の公開の仕方が非常に重要になります。住民のパニックや地元産業への風評被害をおそれて、毒にも薬にもならない情報だけを公開し、本当に重要な情報は公開せず、行政だけが握るということもありえます。行政が、いかに地場産業への風評被害ばかりを重視し、住民や消費者の安全をないがしろにするかは、原発事故後の福島県知事の言動を見れば明らかです。

6月28日、前兆情報収集で先行する須崎市では、前兆現象観測の調査委託料について、市議会で〝イチャモン〟のような付帯決議がついています:

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季節外れの太陽柱 ― 北海道各地


6月26日の夕方、北海道内の各地で太陽柱(サンピラー)が観測されました。太陽柱は、大気中に「水平に浮かんだ板状の氷晶の表面で太陽からの光線が反射され、太陽の虚像として見える」(Wikipedia)現象で、厳冬期に見られることが多いのですが、「真冬でも見られない見事なサンピラー。広域で同時に見られるのは珍しい」(なよろ市立天文台)とのことです:

なお、27日には東京都心で虹のような光の輪が太陽の周りに見える日暈が観測されています:

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カンノンチクが開花 ― 兵庫県淡路市


兵庫県淡路市(地図)の民家で、数十年に一度しか開花しないといわれるカンノンチクが花を咲かせています。専門家は「植物は一般的に、生育が難しい状態になると花を咲かせ子孫を残そうとする」として、植木鉢を変えるに際して根を切断するなど、生育環境が変化したことが原因だろうと推測しています:

カンノンチクは名前に「チク」とついていますがヤシ科カンノンチク属の植物で、イネ科タケ亜科に属するとは系統が異なります。


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地震急増、マグマ貫入 ― カナリア諸島


カナリア諸島エル・イエロ島(地図)の南沖で昨年10月から続いていた火山活動は、今年3月6日に地元防災当局が終息を宣言しました。しかし、6月25日ごろから地震が急増し、島の一部地域が4日間で5cmも隆起する地殻変動が観測されました。また、陸上に設けられた観測点での二酸化炭素ガスの放出量も増加。陸域へのマグマの貫入が始まったとみられるため、島の南西部の地域に警戒レベル〝イエロー〟が発令されました:

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2012年6月24日日曜日

カエルに異変 ― 静岡県東伊豆町


モリアオガエルは水面上にせり出した木の枝などに卵を産み付け、孵化したオタマジャクシは直下の水面へ落下して水中生活を始めます。しかし、静岡県東伊豆町(地図)では、昨年から下に水がない場所に産卵する現象がおきているとのこと。下に水がなければオタマジャクシの生存率はかなり低くなると思うのですが、モリアオガエルはなぜこの様な産卵行動をとるようになったのでしょうか。「20年以上勤めているが、一昨年まではなかった」(現場の責任者)、「下に水のない場所での産卵は珍しい。原因については断定できない」(あわしまマリンパーク):

ひょっとしたら、豪雨が増えていることと関係があるのかも知れません。通常、孵化したオタマジャクシは雨とともに下の水面へ落下するのですが、大量の雨水があれば、その流れに乗って数メートル程度先の池や沼にたどり着くことは容易なのではないでしょうか。


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2012年6月23日土曜日

間欠泉が相次いで活動再開 ― イエローストーン


米国北西部のイエローストーン国立公園(地図)で、休止状態になっていた間欠泉が6月になって相次いで噴出を再開しています:

記事をまとめると以下のとおりです:
  • 6月9日 ― ファン・ガイザーとモルタル・ガイザーが噴出を再開。最後の噴出は2011年10月。
  • 6月18日 ― エキヌス・ガイザーが噴出を再開。最後の噴出は2011年1月。目視による噴出確認はなく、間欠泉周囲の水温の上昇記録から推定。
  • 6月20日 ― モーニング・ガイザーが噴出を再開。翌21日に2回目の噴出。30分間継続し、高さ200フィート(約61m)に到達。最後の噴出は1994年なので、18年ぶりの復活。

イエローストーン国立公園内の間欠泉は活動期間と休止期間をくり返すものがあり、間欠泉の活動が復活したからといって直ちにイエローストーン全体の火山活動が活発化する兆しであるとは考えられません。

上記の記事を掲載している『Yellowstone Gate』は、イエローストーン国立公園とグランド・ティトン国立公園(地図)やその周辺の地域社会の情報を扱うニュース・サイトです。上記の記事は、同サイトに今朝10時の時点で一度掲載されたのですが、30分ほどのちに再度アクセスすると〝Page not found〟となっており、その後ずっとその状態が続いていました。今夕6時になって再び掲載されたのですが、URLは新しいものに変わっていました。その間に、何らかの変更が記事に加えられたのでしょうか。少なくとも記事のタイトルは、〝Several dormant Yellowstone geysers are entering new active periods〟から〝Yellowstone geysers become active again after dormant periods〟に変わっています。


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大形小惑星が地球に接近 (続報)


6月18日付「大形小惑星が地球に接近」の続報です。

日本時間の6月15日に地球に最接近した大形小惑星〝2012 LZ1〟の直径が、当初考えられていた〝シティ・ブロック・サイズ〟(約400m)ではなく、その2倍の約1kmであることが、プエルト・リコのアレシボ天文台がおこなったレーダー観測によって明らかになりました:

小惑星はどんなに大きな望遠鏡を使っても点にしか見えません。そのため、望遠鏡で見える映像から直径を直接測ることはできません。当初の〝シティ・ブロック・サイズ〟という推定値は、小惑星までの距離とその明るさから計算されたものでした。同じ小惑星なら近くにあるほど明るく見える、大きな小惑星ほど太陽の光を多く反射するので明るく見える、という原理にもとづいた計算でした。

しかし、この計算法には落とし穴があります。それは、小惑星の表面反射率によって大きさの推定値が影響を受けるという点です。ほとんどの小惑星の反射率は4%程度といわれていますが、反射率が高ければ同じ大きさの小惑星であってもより明るく見え、反射率が低ければより暗く見えます。そのため、直径の推定値は、反射率の高い小惑星では実際よりも大きく、反射率の低い小惑星では実際よりも小さくなってしまいます。今回の〝2012 LZ1〟の場合は後者で、表面の反射率が想定よりも低かったため、その大きさが過小評価されてしまったということのようです。

〝2012 LZ1〟のような直径1km級の小惑星が地球に衝突した場合、人類絶滅には至らないものの全地球規模の甚大な災害になると考えられています。幸いなことに、〝2012 LZ1〟は今後少なくとも750年間は地球に衝突することがないということです。


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群発地震をくり返すカトラ山 ― アイスランド


アイスランド南部の氷河に埋もれた活火山・カトラ(地図)のカルデラで群発地震がくり返し発生しています:

1回の群発地震では十数回から数十回の地震が発生。規模の小さい地震がほとんどですが、以前に比べると深さ1km未満のものが増え、発生場所もカルデラ中央部直下のものが増えています。報道にもとづいてこれまで私がメモした群発地震の発生時期は以下のとおりです。発生間隔が短くなっているようです:
  • 10月26日~28日
  • 1月30日
  • 2月3日~5日
  • 2月15日
  • 5月15日
  • 5月28日~29日
  • 6月5日~7日
  • 6月11日
  • 6月20日

4月28日と、5月7日から8日にかけては、氷河が急激に溶けたためとみられる突発的な洪水がカトラ山周辺で発生しています。


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2012年6月21日木曜日

岩手山で低周波地震と火山性微動 (続報)


5月25日付「岩手山で低周波地震と火山性微動」の続報です。

以下の記事は、岩手山で5月20日午前0時ごろに火山性微動が観測されていたことが、「岩手山の火山活動に関する検討会」で報告されたことを伝えるものです。「会は非公開で行われ、終了後、座長の斎藤徳美・放送大学岩手学習センター所長が明らかにした」とあり、あたかも火山性微動があったという事実が初め公表されたような書き方です。しかし、これはこのブログの5月25日付「岩手山で低周波地震と火山性微動」にも書いたように、気象庁の5月25日付『週間火山概況』ですでに一般に発表されていることです:

記事のタイトルだけを見ると、岩手山で再び火山性微動があったような印象を受けますがそうではありません。記事を書いた記者は『週間火山概況を見ていなかったのでしょう。


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2012年6月18日月曜日

イワシの異変と阪神淡路大震災


関東大震災の前に見られたイワシの異変については6月7日付「大量のイワシ打ち上げられる ― 千葉県いすみ市 (続報)」に書きましたので、今度は阪神淡路大震災の前に見られたイワシの異変を『前兆証言 1519!』(弘原海清、東京出版、1995)から抜き出してみました:


▼神戸市須磨区
須磨水族館職員の話ですが、地震1日前に、イワシの群れが普段とは違った泳ぎをしていたそうです。反対の方向に泳ぎだしたり、バラバラになって泳ぎだしたりと、とにかく「なんか変な動きやった」ということです。

▼大阪市
1月16日(注: 大震災の前日)の深夜漁では、普段は海面にまでめったに浮上することのないイワシが、海面スレスレまで浮上していた。

▼西宮市
地震の前兆ではないかと思われる現象をまとめてみました。いずれも聞いた話またはうわさ話ですので他の情報と合わせてご判断下さい。(中略)西宮市浜松原町の川に前日イワシが大量にあがった。

▼西宮市
去年(注: 大震災の前年)の11月19日夙川をイワシがさかのぼりました。この時カメラがなかったので写せませんでしたが、河口から2百メートルくらいの所に百匹以上の魚の大群がいたので、観察すると20センチぐらいのイワシの集団でした。落ちアユの間違いかも知れないとよく見ましたが、背が青で腹が銀色です。しかも側線ははっきりしていません。また、ここには見間違うオイカワの大群はいません。イワシの集団は2つに分かれていました。

▼西宮市
震源からほど遠くない明石市役所裏の釣場は、梅雨空け近くなると豆アジがまず釣れ、小アジに成長するまでの9月の中旬頃まで続き、これと入れ替わるふうにイワシが釣れ始め年末近くまで続くのが例年で、私もここ十数年来毎年繰り返し楽しんでいた。ところが、昨年(注: 大震災の前年)は小アジもイワシも全く釣れなかったのです。釣り仲間で頭をかしげながら明石大橋の工事か、中崎海岸の埋立で海流が変ったのだ等々ささやき合ったものです。

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大形小惑星が地球に接近


「大形小惑星」とは形容矛盾のような気がしますが、直径約500mで〝シティ・ブロック・サイズ〟(都市の街区の大きさ)と表現される小惑星〝2012 LZ1〟が、6月15日午前8時8分(日本時間)に地球に最接近しました。この時の距離は約530万kmで、地球から月までの距離の約14倍です:

〝2012 LZ1〟は6月10日から11日にかけての夜間にオーストラリアの天文台で発見されたものです。この種の小惑星の常として、発見から地球最接近、あるいは地球大気圏突入までの時間が数日から数時間程度と短く、地表に到達する場合には避難する時間がほとんどありません。

〝2012 LZ1〟が次に地球の近くにやって来るのは 2053年6月12日と計算されています。

これまでにこのブログで紹介した地球接近小惑星のうちで最大のものは、直径約400mで〝航空母艦サイズ〟と形容された〝2005 YU55〟ですから、〝2012 LZ1〟はその記録を更新したことになります。ただし、〝YU55〟は月よりも近いところを通過していきましたから、接近距離では〝YU55〟に軍配が上がります。ちなみに、白亜紀末に地球に衝突して恐竜を絶滅に追いやったとされる小惑星は桁違いに大きくて、その直径は10km前後と推定されています。

〝2012 LZ1〟の軌道要素や軌道図は以下にあります:

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イルカが迷い込む ― 宮城県女川町 (続報)


6月14日付「イルカが迷い込む ― 宮城県女川町」の続報です。

イルカが迷い込んだ宮城県女川町(地図)沖の万石浦から北東に80kmの地点で、6月18日午前5時32分ごろ地震がありました。気象庁の速報値ではM6.1(深さ40km)ですが、防災科学技術研究所の発表ではM6.4(深さ43km)、米国地質調査所の発表ではM6.4(深さ31.8km)となっています。


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X-37B 2号機が地球に帰還


6月16日、X-37Bの2号機がカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地に着陸しました。昨年3月に打ち上げられて以来、469日間(約15ヵ月)の軌道飛行でした:

以下はアメリカ空軍が公開した動画です。大気圏突入の際の高熱を残したまま滑走路に進入し、かなりの高速で滑走する様子が映っています:

空軍はX-37Bの目的について具体的には明らかにせず、材料や機器の性能をテストするための運搬手段であるとしています。そのため、その目的についてさまざまな憶測が出ています。その一つに、中国の宇宙開発、特にその宇宙ステーションの原型である「天宮1号」を監視するのが狙いであるとの説がありますが、「天宮1号」の軌道とX-37Bの軌道から考えて、その可能性はないというのが専門家の見方です。

奇しくも、X-37Bが地表に戻った6月16日に、中国は「神舟9号」を打ち上げています。女性1人を含む3人の宇宙飛行士が搭乗して「天宮1号」に向かい、自動や手動のドッキング実験をおこなうことになっています。「神舟9号」が打ち上げられたのが16日午後7時37分(日本時間)、X-37Bが着陸したのがその約2時間後の午後9時48分(日本時間)で、なにやら意味ありげです。きっと新たな憶測が出てくることでしょう:

今秋にはX-37Bの3度目の打ち上げが予定されています。これには、X-37Bの1号機が使われることになっています。

X-37Bの製造元であるボーイング社は、X-37Bより65%から80%大きいX-37Cの製造を計画しています。前者は無人ですが、後者は6人の人員を宇宙ステーションに送り届ける能力があるとのことです。


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2012年6月17日日曜日

イワシが大量死 ― 神奈川県三浦市


6月14日、神奈川県三浦市(地図)の海岸に大量のイワシが打ち上げられているのが見つかりました。カタクチイワシとみられ、約1万匹。死後数日が経過しているとのこと。「こんなことは初めて」、「10日の朝、海面を跳ねて磯に追い込まれる魚の大群を見た」、「10日午後から、魚の腐ったような臭いがした」(近隣住民)。「これだけの規模の死骸は初めて」(かながわ海岸美化財団):

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イワシの大群が押し寄せる ― 青森県深浦町


6月13日、青森県深浦町(地図)の海岸にカタクチイワシの大群が押し寄せました。付近にカタクチイワシが現れることはめったにないとのこと。「何十年ぶりでは」(地元住民)、「子どものころに上がった記憶はあるが、海岸がコンクリートに固められてからは見なくなった」(地元の年配女性)、「浜辺の海草に卵を産み付けにきたのだと思うが…」(地元漁師):

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2012年6月14日木曜日

イルカが迷い込む ― 宮城県女川町


6月13日、宮城県女川町(地図)沖の万石浦に、体長約1mのイルカが迷い込んでいるのが見つかりました。「イルカがここに来るなんて初めて」、「イルカが万石浦まで入ってきたのは初めて見た」(地元住民):

地図で見るとわかりますが、イルカが迷い込んだ万石浦は、狭い水路だけで外海とつながる入江です。また、昨年3月11日の東北地方太平洋沖地震の震源域に近いところです。


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富士山上空に虹色の光の帯


6月13日午前、富士山上空に環水平アークとみられる現象が観測されました:

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2012年6月13日水曜日

広島湾にスナメリの大群


6月11日、山口県周防大島町(地図)北方約5kmの広島湾で、スナメリ約100頭の群れが泳いでいるのが見つかりました。「これほどの規模は珍しい」(須磨海浜水族園)、「春と秋に十数頭の群れを見かけるが、100頭は破格の多さだ」(広島工業大):

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2012年6月11日月曜日

カモシカ、クマと連続衝突 ― JR仙山線


列車がシカをはねる事故は、北海道や紀伊半島を中心にかなり頻繁に起きています。また、このシーズンはクマの出没報道も非常に多くなっています。どちらも珍しくないということで、このブログではあまり取り上げていません。しかし、シカと比べると希少なカモシカとクマが相次いで線路上に現れるのは珍しいのではないでしょうか。

宮城県仙台市と山形県山形市を結ぶJR仙山線で、同一の列車がカモシカとクマに相次いで衝突する事件がありました。6月10日午後7時ごろ、山形市の高瀬駅(地図)―山寺駅(地図)間でカモシカに衝突。さらに、運転再開後の午後7時45分ごろ、仙台市の作並駅(地図)―熊ヶ根駅(地図)間で線路上にいたクマをはねたとのことです:

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オリンピック・アルマゲドン (その2)


6月11日付「オリンピック・アルマゲドン (その1)」からの続きです。

以下がその文書です。現在もロックフェラー財団のウェブサイトで読むことができます:

上記文書の34ページ目に以下のような「シナリオ」があります。ロンドン・オリンピックでの惨事以外に、地震、津波、飢饉が想定されています。すべて過去形を使って書かれているので、歴史の教科書を読んでいるような気分になります:
Devastating shocks like September 11, the Southeast Asian tsunami of 2004, and the 2010 Haiti earthquake had certainly primed the world for sudden disasters. But no one was prepared for a world in which large-scale catastrophes would occur with such breathtaking frequency. The years 2010 to 2020 were dubbed the “doom decade” for good reason: the 2012 Olympic bombing, which killed 13,000, was followed closely by an earthquake in Indonesia killing 40,000, a tsunami that almost wiped out Nicaragua, and the onset of the West China Famine, caused by a once-in-a-millennium drought linked to climate change.

後半部分を翻訳すると以下のようになります:
2010年から2020年にかけての10年間は〝悲劇の10年〟と名付けられた。そのように名付けられた理由は ― 1万3000人が死亡した2012年オリンピックへの爆撃、その直後に起き4万人の死者が出たインドネシアの地震、ニカラグアのほぼ全土を壊滅させた津波、そして、気候変動に関連するとみられる1000年に1度の干ばつによって引きおこされた中国西部の飢饉が始まったこと、である。

2010年に出された文書ですから、当然のことながら2011年3月の東日本大震災に相当する出来事はシナリオに含まれていませんが、大きな災厄が立て続けに起こる10年間という予測は当たりそうです。

ところで、上記のロックフェラー文書にはなぜ多くのシナリオが記載されているのでしょうか。それは、シナリオ・プランニングという戦略策定のための手法に用いるためです。シナリオ・プランニングについては以下を参照してください:

上に引用したシナリオ以外にも、上記ロックフェラー文書にはたくさんのシナリオが記載されていますが、その中に「Japan」という単語はまったく出てきません。これは喜ぶべきことなのでしょうか、それとも日本の国際的地位の低下を示しているのでしょうか。


(完)

オリンピック・アルマゲドン (その1)


ロンドン・オリンピックの開幕まで46日となり、日本の出場選手も次々に決まっています。このオリンピックに対しては、何らかのテロ攻撃があるのではないかと以前から危惧されてきました。たとえば、以下は2010年3月31日付でイギリスの大衆紙〝デーリー・メール〟のウェブサイトに掲載された記事です:

上の記事はセンセーショナルな内容で信憑性は今ひとつですが、2011年5月にオサマ・ビンラディン容疑者が米軍に殺害されて以降は、アルカイダによる西欧社会に対する報復テロが現実味を増しています。

最近目にするのは以下のような記事です。タイトルは、「ロックフェラー財団がロンドン・オリンピックで1万3000人の死者が出ると予測している」。ロックフェラーといえば、しばしば世界的な陰謀の頭目に擬せられる財閥一族です。「ロックフェラー」という言葉を聞いたとたんに条件反射的に妄想全開になる陰謀論者でなくとも、興味をそそられるタイトルと言えるでしょう。はたしてロックフェラー一族がオリンピックで何かを起こそうと企んでいるのでしょうか:

上記記事が指摘しているのは、ロックフェラー財団Wiki)とグローバル・ビジネス・ネットワークWiki)というコンサルティング会社が共同で2010年5月に発表した文書の中に、2012年のオリンピックで爆発がおこり1万3000人の死者が出るという「シナリオ」が書かれているという点です。


続く

2012年6月9日土曜日

深海魚の出現相次ぐ ― 静岡県


以下は、静岡県で深海魚の出現が相次いでいるという記事です(2件とも本文は同一)。昨年12月には牧之原市の海岸にリュウグウノツカイが漂着し、今年4月には駿河湾でサクラエビ漁の漁網にラブカ4匹が生きたまま漁網にかかったことを紹介しています。しかし、「大地震の予兆」という見方に対して、「地震との関係は不明だが、サクラエビを追って来たのでは」や「季節風で表面の海水が流され、それを補うように海底から海水が上昇する『湧昇流』で運ばれてきたのだろう」という専門家の懐疑的な見方を伝えています:

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2012年6月8日金曜日

トキシラズが爆発的豊漁 ― 北海道・室蘭沖


北海道・室蘭市(地図)沖でトキシラズの爆発的な水揚げが続き、テニスコート2面ほどの卸売市場の競り場は毎朝、トキシラズで一面埋め尽くされているとのことです。「豊漁の要因は不明」、「25年近く市場に通うが、こんな経験したことがない」(仲買人):

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ヘビが原因の停電 ― 愛知県美浜町


6月7日午後7時30分ごろ、愛知県美浜町(地図)の電柱にヘビが上り高電圧部に接触したことが原因で、美浜町などの約1500戸が数時間にわたって停電しました:

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テンガイハタ捕獲 ― 秋田県男鹿市


6月5日、秋田県男鹿市(地図)の浅瀬で深海魚・テンガイハタが捕獲されました。全長 1.57m、重さ 4.5kg。「テンガイハタは主に200メートルよりも深いところに生息。浅瀬に姿を見せることはほとんどなく、食べてもおいしくない」とのこと:

秋田県男鹿市では、2011年2月14日(東日本大震災の約1ヵ月前)にもテンガイハタが漂着しています:

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2012年6月7日木曜日

大量のイワシ打ち上げられる ― 千葉県いすみ市 (続報)


6月4日付「大量のイワシ打ち上げられる ― 千葉県いすみ市」の続報です。

千葉県いすみ市の大原漁港に大量のイワシが押し寄せた事件ですが、FNN フジニュースネットワークの報道によると、「今、房総半島の太平洋側で、同じような現象が相次いで報告」されており、いすみ市の別の漁港や、隣接する勝浦市や鴨川市の漁港でも同様の現象が相次いでいるとのことです。

FNNのニュース画面 (クリックで拡大)
いすみ市大原漁港以外の漁港にもにもイワシが押し寄せていた。

同様の現象が起きていたのは、「大原漁港から北におよそ8.5km離れた同じいすみ市の太東漁港」と、「いすみ市に隣接する勝浦市や鴨川市の、少なくとも5つの漁港」です。「4月の初めごろに、勝浦市内の各小さな漁港の方に入る現象が見られまして、13日に松部漁港、16日に川津漁港で大量に(イワシが)打ちあがったようです」(勝浦水産事務所):

このような現象が起きた原因については、「最近、カタクチイワシを餌にしているサバ・ブリが増えつつありますので、(イワシが)追われて岸の方に近づいてきたと考えられる」(勝浦水産事務所)、「例年4月ごろには旬が終わるブリの幼魚「イナダ」が、5月に入ってもまだ例年以上にとれ続けている」(鴨川漁港)とのことです。

1923年9月1日に起きた関東大震災の前にもイワシの大群が岸近くや川で目撃されています。『地震前兆現象』(力武常次、東京大学出版会、1986)から目撃談をいくつか紹介します:
  • 朝の通学電車の中から川一面にイワシが腹を上にして浮いているのをみました。(横浜市中区本牧、震央からの距離 42km、地震の50日前)
  • 避暑に行っていた際、イワシが体にぶつかる位いっぱいいた。(千葉県一宮、101km、40日前)
  • 家の裏側を流れる大岡川に大量の魚(イワシ)が海から遡上してきたのを見た。同時に死んだ魚がかなり浮き上がっていた。(横浜市翁町、42km、20日前)
  • 8月30日からイワシが川を上り初め、皆がざるですくっていました。(横浜市中区元町、42km、2日前)
  • 8月31日箱船で釣りに出たところ岸から程遠からぬ沖合でイワシとサバが小学校6年生だった自分にも60~70尾も釣れる程釣れた。土地の漁師がこの様な事はこれまで一度もなかったと言っていた。(大磯・照ヶ崎海岸、11km、1日前)
  • 東京湾のイワシ漁は、六隻ぐらいの漁船がイワシの群れを音でおどしながら網の方向へ追いたてていく、といった漁法を採っていたそうだ。例年はイワシがどちらに逃げるか定まらなかったが大震災の前の月、八月には、音で驚いたイワシの群れは必ず、木更津―浦安―横浜の方向をとって回遊したという。(東京湾、61km、1ヵ月前)

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写真集 ― 金星の日面経過と金環日食


悪天候のせいで私は金星の日面経過を見ることができませんでした。さまざまなサイトが金星の日面経過の写真集を掲載していますので紹介します。

▼ 『ボストン・グローブ』紙の〝The Big Picture〟。私のお気に入りは15枚目です。タージ・マハルの塔の先端にとまった鳥(カラス?)と日面経過中の金星を撮影したものです。惜しいことに少しブレているようですが、日本神話の八咫烏を思い起こさせます:

▼ NASAのサイトに掲載されている写真集です。8枚目の写真は、NASAと日本のJAXAが共同で運用している太陽観測衛星「ひので」が撮影したものです。金星の薄い大気層が輝いているのがわかります:

▼ NASAの太陽観測衛星が撮影した日面経過の写真集と動画です。公開されているものの中では最も精細度の高い画像と動画だと思われます。動画は全画面表示で見ることをお勧めします:

▼ 国立天文台のサイトに掲載されている写真集です。「速報: 金星の太陽面通過 内食の始め 」と題した動画で見る限りは、ブラック・ドロップ現象は起きていないように思えるのですが、ブラック・ドロップ現象が観察できたとの報道もあります:

遅ればせながら、先日の金環日食の写真集も紹介します。

▼ 『ボストン・グローブ』紙の〝The Big Picture〟。世界の中でも日本は観測条件が良かったため、日本で撮影された写真が多数収録されています。私のお気に入りは23枚目の写真です。ラスベガスのおじさんが、年季の入った日食メガネで太陽を見ています。察するに、子どもの頃から日食のたびに何度も使ってきた物ではないでしょうか:

▼ 説明は不要だと思います:

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深海魚ナガユメタチモドキ水揚げ ― 富山県氷見市


6月4日、富山県氷見市(地図)の魚市場に深海魚ナガユメタチモドキが水揚げされました。ナガユメタチモドキは「南日本の太平洋やインド洋 など水深200~800メートルに生息」する魚で、「氷見沖ではめったに見られない」(漁業関係者)とのこと:

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枯渇した自噴式井戸から湧水 ― 滋賀県大津市


滋賀県大津市の瀬田地域(地図)に点在し、昭和30年代ごろまで使われていた自噴式の井戸「エンコ」は枯渇したとみられていましたが、近年、再び水が湧き出していることが調査によって確かめられました:

湧水が復活した原因については、「地下水を取っていた周辺の工場の撤退が大きい」と見られています。しかし、大津市瀬田地域は琵琶湖の南端部にあり、同県高島市(地図)沖で起きている琵琶湖の湖底堆積物吹き上げ現象と何らかの関係があるのではないか、という気もします:

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2012年6月6日水曜日

金星の日面経過 (その2)


6月6日付「金星の日面経過 (その1)」の続きです。

金星の日面経過については、例によってスピリチュアル系やオカルト系のウェブサイトで災害との関連が取りざたされています。

そのような「関連」は疑似相関として一蹴できるレベルのものですが、試みに17世紀以降の金星の日面経過について、その年と前後1年に起きた地震と火山噴火をリストアップしてみました。▼印のついた年月日が金星の日面経過が起きた日付です。

金星の日面経過と相前後して発生した特に大きな災害としては、1883年のクラカタウ山の巨大噴火(日面経過の翌年)、2004年のスマトラ島沖大地震と大津波(日面経過の半年後)、2011年の東北地方太平洋沖地震(日面経過の前年)があります:

▼ 1631年12月7日
  • 1630 江戸 M6.25(江戸城の石垣崩れ、塀も破損)
  • 1631 イタリア・ヴェスヴィオ山(死者3000~6000?)
▼ 1639年12月4日
  • 1638 北アメリカ東部 (マグニチュード不明)
  • 1638 ジャワ島のラウン山(死者1000人)
  • 1640 北海道駒ヶ岳(山体崩壊に伴う岩屑なだれが内浦湾に流入し、大津波が発生。死者700余名)
  • 1640 加賀大聖寺 M6.25~6.75(家屋の損潰多く、人畜の死傷も多かった)
▼ 1761年6月6日
  • 1760 モルッカ諸島のマキヤン山(泥流により死者2000人)
  • 1760 琉球(城墻57ヶ所崩れる)
  • 1762 土佐(高岡郡で瓦落ち、山崩れる。岩国・宇和島・筑後で有感)
  • 1762 佐渡 M7.0 (石垣・家屋が破損、銀山道が崩れ死者、鵜島村で津波により26戸流出。新潟で地割れを生じ、砂と水を噴出。酒田・羽前南村山郡・日光で有感)
  • 1763 陸奥八戸 M7.4、M7.25、M7.0
▼ 1769年6月3日
  • 1768 トルコ・アナトリア地方 M 8.0 死者 8,000人
  • 1768 琉球(王城などの石垣が崩れた。津波が来て、慶良間島で田園と民家9戸を損じた)
  • 1768 陸奥八戸(3回地震、家屋・塀などの被害が少なくなかった。和賀郡沢内で震動が強かった)
  • 1769 有珠山(火砕流で山麓の民家焼失)
  • 1769 日向・豊後・肥後 M7.75(延岡城・大分城で被害多く、寺社・町屋の破損が多かった。熊本領内でも被害が多く、宇和島で強く感じた。津波があった)
▼ 1874年12月9日
  • 1873 アメリカ・カリフォルニア州-オレゴン州 M 7.3
▼ 1882年12月6日
  • 1881 北海道 M7.0(国後島泊湊で板蔵など倒れ、または大破した。津軽でも強く感じた)
  • 1882 高知市付近(市中で壁が落ち、板塀が倒れ、石灯籠の頭が落ちるなどの被害があった)
  • 1882 アメリカ・コロラド州 M 6.6
  • 1883 インドネシア・クラカタウ山(津波と火砕流で36,000人以上の犠牲者)
▼ 2004年6月8日
  • 2003 宮城県沖 M7.1
  • 2003 宮城県北部 M6.4 震度6強記録
  • 2003 釧路沖 M8.0 『平成15年十勝沖地震』
  • 2003 アルジェリア北部 M 6.8 死者 2,266人
  • 2003 イラン南東部 M 6.6 死者 31,000人
  • 2004 新潟県中越地方 M6.8 『平成16年新潟県中越地震』
  • 2004 インドネシア・スマトラ島沖 M 9.1 死者 227,898人
  • 2005 福岡県西方沖 M7.0
  • 2005 宮城県沖 M7.2
▼ 2012年6月6日
  • 2011 三陸沖 M7.3
  • 2011 三陸沖 M9.0 『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震』、その後、長野県北部(M6.7)、静岡県東部(M6.4)などの誘発地震や余震多数
  • 2012 鳥島近海 M7.0

上記のリストを眺めると、金星の日面経過は6月と12月に起きていること、日面経過が1度起きると8年後の同じ月にまた起きること、などの規則性があることがわかります。このような規則性は、金星と地球の公転周期の比や、金星の公転軌道が地球の公転軌道に対して3度以上傾いていることなどによって生じています。


(完)


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金星の日面経過 (その1)


私の暮らす関東地方では、雨や曇りで金星の日面経過はまったく見ることができませんでした。残念至極。次回は105年後の2117年12月ですから、今生きている人でそれを見ることができるのは、ごくごくわずかでしょう。

日食は、場所を問わず海外に出かける労をいとわなければ毎年のように観測できます。それに対して、金星の日面経過は非常にまれな現象です。NASAの資料(12)によると、17世紀初頭に望遠鏡が発明されて以降に起きた金星の日面経過は、今日のものを含めてわずかに8回。紀元前2000年から現在まででは53回。範囲を広げて紀元前2000年から紀元後4000年までの6000年間でもわずかに81回です。それを考えると、今日の日面経過を見逃したことに対する残念さが募ります。

ところで、私は「日面経過」という言葉を使っていますが、報道などでは「太陽面通過」という言葉が使われています。私自身は天文関係のクラブに所属していたときから「日面経過」という言葉を使い慣れており、当時目にしていた資料も「日面経過」を使っていたと記憶しています。このところ「太陽面通過」を目にすることの方が多くなってきて疑問に思っていたのですが、国立天文台の資料に以下のような説明があり得心しました:
国立天文台暦計算室が提供する情報(理科年表を含む)においては、原則として「日面経過」という用語で統一しています。 
2004年に、天文の教育普及関係者より「太陽面通過」という用語で統一することが提案された経緯から、現在では教育関係、報道関係で「太陽面通過」が多く用いられているようです。それにあわせて、この記事でも「太陽面通過」を主に用いています。 
なお、ほかに「日面通過」「太陽面経過」という用語も見かけますが、誤りではありません。 

たしかに、「日面経過」では天文分野になじみの薄い人たちにはわかりにくいのに対して、「太陽面通過」だとどのような現象なのかイメージしやすいと思います。私自身、初めて「日面経過」という用語を耳にしたときには、「日面」はともかく、「経過」の方には違和感を覚えたものです。

この件については、詳しい説明が以下にあります:

(続く)

月食と大地震


今夜は部分月食です。午後5時46分に月が地球の半影に入り始めます。6時59分に月が地球の本影に入り始め、月が欠け始めます(部分月食の始まり)。8時3分に欠けた部分が最大になります。最大食分は0.376で、月の右下が欠けた状態になります。9時7分に月が地球の本影から出て部分月食が終わります。その後も月は地球の半影の中にあり、完全に半影から抜け出すのは10時20分です。

東京の月の出は午後6時45分ですから、月が出たときにはすでに半影月食は始まっていることになります。半影月食にはほとんどの人が気づかないと思いますが、月がいつもより暗いとか、色が変だと感じる人が中にはいるかも知れません。月がかけ始めるのは月の出から十数分後ですから、月が地平線上の低い位置にあるときに月食が始まることになります。月の見える方角はおおよそ南東です。

以下の記事は〝Scientific Computing〟誌のウェブサイトに掲載された記事です:

以下は記事の要約です:
1973年以降に発生したマグニチュード6.5以上の地震をリストアップし、月食や日食の時期と比較した。 
日食の前後には地震はわずかしか増加しなかった。日食のときには太陽と月が同じ方向に地球を引っ張る。 
月食の前後には大地震の発生確率が2倍に跳ね上がった。月食のときには太陽と月がそれぞれ逆の方向に地球を引っ張る。通常の場合、マグニチュード7.5以上の地震は平均して73.8日に1回の頻度で発生する。ところが、月食の前後1日の期間に限ると、発生頻度は33日に1回に上昇する。より小さな規模の地震でも発生頻度は大幅に上昇する。 
月食と地震の関係を示す最近の事例は、2010年12月21日に日本で発生したマグニチュード7.4の地震である。その次の日にはイランでマグニチュード6.5の地震があり、11人の死者が出た。

「月食と地震の関係を示す最近の事例」として挙げられているのは以下の地震です。記事では日本の地震が先で、その後にイランの地震が起きたように書かれていますが、実際は逆です:

12月21日に皆既月食があり、日本時間で午後4時40分から5時53分(UTCでは同日07:40から08:53)まで皆既状態となりました。イランの地震は月食前、日本の地震は月食後ということになります。

月食は満月のときに起きますので、上記の統計は地震と満月の関係を示しているのかも知れません。

ところで、記事では上記の調査をおこなった Robert Bast という人について所属を明示せずに〝Researcher〟(研究者)としか書いていませんが、本人のウェブサイトでは〝2012 Researcher〟となっています。どうも私たちがイメージする普通の「研究者」ではないようです:

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2012年6月3日日曜日

夜空ノムコウ ― 40億年後 (その2)


夜空ノムコウ ― 40億年後 (その1)」の続きです。

5月31日のNASAの発表には、非常に美しいイラストが多数添付されています。

▼ 現在の夜空 ― 天の川の左側に見えている紡錘形の光の塊がアンドロメダ銀河。約250万光年のかなたにあり、見かけ上の直径は満月の数倍で、肉眼でかろうじて見える明るさです:

▼ 20億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河が大きく見えるようになっています:

▼ 37億5千万年後の夜空 ― アンドロメダ銀河が視野のほとんどを占めるようになり、天の川はアンドロメダ銀河の潮汐力によってゆがみ始めています:

▼ 38億5千万年から39億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河接近の衝撃によって新しい恒星の形成が促進され、夜空は多数の星雲や若い恒星からなる散開星団の発する光で輝いています:

▼ 40億年後の夜空 ― 最初の接近の後、アンドロメダ銀河は潮汐力によって引き延ばされ、天の川は大きくゆがんでいます。こういう星空のもとで人類が進化したとしたら、いったいどのような神話が生まれていたでしょうか:

▼ 51億年後の夜空 ― 2度目の接近の最中、われわれの銀河系とアンドロメダ銀河の中心部分(コア、核)が2つの明るい塊として見えています。新しい恒星を形成する星雲は目立たなくなっていますが、それはこれまでの恒星の形成によって恒星間のガスや塵が減少しているためです:

▼ 70億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河とわれわれの銀河系は融合して一つの巨大な楕円銀河となり、その明るい中心部分(コア、核)が夜空のほとんどを占めています。この楕円銀河では、すでに恒星間のガスや塵が使い尽くされているため、新たな恒星は形成されず、星雲も夜空には見当たらなくなっています。楕円銀河を構成する年老いた恒星は、渦巻き銀河に見られるような回転円盤上に集まることはなく、楕円体の空間を満たすだけです:

▼ アンドロメダ銀河の移動を計測 ― このイラストは、研究チームがハッブル宇宙望遠鏡を向けたアンドロメダ銀河の領域を示しています。アンドロメダ銀河が宇宙空間を移動するとき、この領域内の星は背後にある銀河(複数)に対してそろって移動するように観測されるはずです:

▼ アンドロメダ銀河とわれわれの銀河系の衝突シナリオ ― 2つの銀河は相互の重力によって約40億年後に衝突することが不可避です。さんかく座銀河もこの衝突に巻き込まれます:

▼ 銀河衝突後の太陽の運命 ― 現在の銀河系と、アンドロメダ銀河との融合が完了した後(現在から100億年後)の楕円銀河の大きさを比較した図です。両者には太陽の軌道が描き込まれています。現在の太陽は銀河系の円盤内を周回していますが、アンドロメダ銀河との融合後は、楕円銀河の中心部と周縁部を行き来するループ上の軌道に放り込まれると考えられています:

NASAによれば、アンドロメダ銀河と銀河系の衝突・融合後も、太陽や地球は存続しているだろうとのことですが、そのころには太陽は燃料をあらかた使い尽くして赤色巨星化の兆候を見せていることでしょう。人類は銀河の衝突が起きるはるか以前に絶滅していると思います。仮に人類の系統が存続しているとしても、想像もつかない姿に変容していることでしょう。銀河衝突の夜空を「だれが」、あるいは「何が」見上げることになるのでしょうか。


(完)


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夜空ノムコウ ― 40億年後 (その1)


地球や太陽系が属する銀河系と近隣のアンドロメダ銀河という2つの銀河(前者は棒渦巻き銀河、後者は渦巻き銀河)は、重力で引きつけあって40億年後に正面衝突、その後、分離・衝突を繰り返して、60億年後には融合して一つの巨大な楕円銀河になる、という研究結果をNASAのチームが5月31日に発表しました:

われわれの住む銀河系(天の川銀河)は、アンドロメダ銀河(M31星雲)、さんかく座銀河(M33星雲)、大マゼラン銀河(大マゼラン雲)、小マゼラン銀河(小マゼラン雲)などとともに局部銀河群を構成しています。

約250万光年かなたのアンドロメダ銀河がわれわれの銀河系に近づきつつあることは、これまでもドップラー効果などの観測によって明らかになっていました。その接近速度は時速約40万km(秒速約100km)で、地球から月まで1時間弱で行ける速さです。しかし、それは視線方向の距離が縮んでいることを示すだけで、アンドロメダ銀河の横方向(視線と直角に交わる方向)の動きについてははっきりしていませんでした。そのため、遠い将来、アンドロメダ銀河とわれわれの銀河系は離れてすれ違うだけなのか、掠めるように接近遭遇するのか、それとも正面衝突するのかはわかっていませんでした。

NASAの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使ってアンドロメダ銀河のハロー(銀河本体の外側に広がる薄いもやのような領域)にある星々の動きを7年間にわたって精密に測定し、その結果に基づいてアンドロメダ銀河の動きを導き出しました。その結果は、アンドロメダ銀河は40億年後にわれわれの銀河系と正面衝突するというものでした。

同じ局部銀河群に属するさんかく座銀河(M33)も、アンドロメダ銀河がわれわれの銀河系と衝突したのちに吸収され合体する公算が大きいが、さんかく座銀河の方が先に銀河系に衝突する可能性もわずかながらあるとのことです。

以下は、アンドロメダ銀河、さんかく座銀河、われわれの銀河系が衝突する様子をシミュレーションした動画です:

続く