6月13日、高知県黒潮町(地図)の町長が町議会での答弁で、地震前兆現象の調査に前向きな考えを示したとのことです。「実効性は不明だが、有識者の意見を聞きながら検討したい。複数の自治体が研究に取り組めば、観測精度の向上が期待できる」(町長):
- 黒潮町、前兆現象調査へ (『読売新聞』の記事ですが現時点でリンク切れになっています)
高知県では、県レベルで「研究者や地域住民にこれまでの異常現象に関する聞き取り調査を行うと共に、県のホームページ上で実際に起きている異常現象などを随時報告してもらってそれを県民が共有できるようなシステムを作っていく」ことを知事が県議会で表明、また、同県須崎市(地図)でも地震前兆情報を市が収集して市民に提供し、自主避難を促す目安として生かすことを決めています。黒潮町もこの流れに乗ることになるわけです。
このように前兆情報を収集する場合には、いくつかの課題があります。1つ目は「悪貨は良貨を駆逐する」問題。これは、3月6日付の「科学的裏づけ無くても情報収集 ― 高知県」に書きました。
もう一つは、風評被害の問題です。公的機関が前兆情報を収集し公開する場合は特に問題となるでしょう。実際に前兆の可能性がある現象が現れ、もうじき地震が起きるのではとの不安が住民の間に広まった場合、地元の経済活動に影響が出る恐れがあります。また、そのような情報はインターネットを介してあっという間に日本中に伝わるでしょう。特に懸念されるのは観光産業へのダメージです。前兆現象を収集している高知県、須崎市、黒潮町のみならず、隣接県や周辺市町村の自治体や業界団体から前兆情報の公開について有形・無形の圧力が加えられる可能性があります。
そのため、前兆情報の公開の仕方が非常に重要になります。住民のパニックや地元産業への風評被害をおそれて、毒にも薬にもならない情報だけを公開し、本当に重要な情報は公開せず、行政だけが握るということもありえます。行政が、いかに地場産業への風評被害ばかりを重視し、住民や消費者の安全をないがしろにするかは、原発事故後の福島県知事の言動を見れば明らかです。
6月28日、前兆情報収集で先行する須崎市では、前兆現象観測の調査委託料について、市議会で〝イチャモン〟のような付帯決議がついています:
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