8月1日、和歌山県みなべ町にある鹿島神社(地図)の奉納花火祭がありましたが、興味深い現象がこの祭りの起源になっているようです。「1707(宝永4)年の大地震で津波が押し寄せた際、鹿島から怪火が現れて押し寄せる高波を東西に分け、南部浦は波静かで被害が少なかった」:
鹿島神社は明治時代に現在の場所に移されたもので、大地震のあったときには沖合の島に鎮座していたとのことです。
宝永年間の大地震だけでなく、嘉永年間の大地震でも同様の現象があったと伝承されているようです。「宝永・嘉永の大地震が発生したおり、南部湾に大津波が押し寄せて来た、その時湾内にある鹿島に鎮座する鹿島神社から怪火が現われて津波を東と西の二つに導いて南部の町をすくった」、「鹿島神社奉納花火祭は、その昔、鹿島から光の玉が現れ、大地震の津波災害から村を救ったことに感謝を捧げる為に宝永5年から始まった」:
地震の前や揺れている最中に発光現象や発光体が現れたとする証言は少なくありません。1944年12月7日に発生した東南海地震(M7.9)でもいくつか記録されています。『地震前兆現象 予知のためのデータ・ベース』(力武常次、東京大学出版会、1986)から2件引用します:
- 名古屋では前夜光体の南方へ飛ぶのを見たといふ。(名古屋市、地震の18時間前、中央気象台『東南海大地震調査概報』)
- 夕方うす暗くなってからの時刻、国鉄東海道線天竜川駅前広場から見た。北方100~350mぐらいの感じ、高さ100mぐらい。光の残る感じ (中略) 火の玉が東から西へと動く。色はオレンジがかった赤、大きな鳥が飛ぶような感じで動いた。頭部の直径は30cmぐらい 100~150m動き、30秒~1分間で消えた。列車が遅れ100人ぐらいの乗客が騒ぎながら見たので私一人の錯覚ではない。 (浜松市天竜川駅前広場、地震の20時間前)
私の想像ですが、大地震の前か揺れている最中に鹿島神社のあった島の方向に発光体が現れたことと、神社があった島によって押し寄せてくる津波が遮られ東西に分かれたために、南部湾の一帯は津波の被害が軽かったこととが関連づけられて伝承が生まれた、ということではないでしょうか。
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