イタリアの首都ローマ市から南東に約20~25kmのところにある Colli Albani Volcanic District (CAVD、アルバン丘陵火山地域、地図)が新たな噴火フェーズに入ったとする論文が発表されました:
- Assessing the volcanic hazard for Rome: 40Ar/39Ar and In-SAR constraints on the most recent eruptive activity and present-day uplift at Colli Albani Volcanic District
- Could a Volcano Be Waking Up on the Outskirts of Rome? (写真あり)
東京都心から箱根山までは約85kmです。20~25kmというと、船橋市までが約20km、府中市までが約25km。そんな近くにある火山が噴火したら、東京はどうなることでしょうか。
論文要旨によるとCAVDはかなり規則正しく噴火する火山で、最近10万年間は約3万1000年間隔で噴火。最後の噴火からすでに3万6000年が経過。1993~2010年の干渉合成開口レーダー(InSAR)の観測データによると山体が膨張しており、山頂は年率2mmで隆起。これらのことから、CAVDは新たな火山活動のフェーズに入っている可能性が高い、と結論づけています。
以下は別の火山学者のブログ記事に記載されている論文本文の内容や補足情報です:
- Colli Albani のカルデラの大きさは 10×12km。
- カルデラが形成されたのは Colli Albani が最も活動的だった時期で、60万8000年前~35万1000年前。
- その後は活動が穏やかになり、30万9000年前~24万1000年前の間は溶岩流出をともなうストロンボリ式噴火を繰り返した。
- さらにその後は Colli Albani 地域の火山活動は小規模な爆発的噴火が主になり、小さな噴石丘(コーン)やマールが形成された。
- 60万8000年前以降、Colli Albani の噴火間隔は最短 2万9000年±2000年、最長5万7000年±4000年で、平均 4万1000年±2000年。
- 過去10万年間に限ると噴火の間隔は約3万1000年に縮まり、最後の噴火から3万6000年が経過している。
- 過去約50年間のローマ市周辺の干渉合成開口レーダーや測量のデータによると、Colli Albani で過去に噴火が起きた部分は約50cm隆起している。
- 1993年以降、Colli Albani の西部は1年に2.6mm隆起している。
- Colli Albani 地域では1990年~1991年に小規模な群発地震が発生している。
- 地球物理学的な調査では、Colli Albani 地域の地下5~10kmに部分溶融したマグマが存在していることが示唆されている。
上記火山学者のブログ記事では、距離があるので関係は薄いだろうとしながらも、3年前にローマ市の南西にあるレオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港(フィウミチーノ空港、地図)で、噴気孔ができ火山性ガスが噴き出した事件を紹介しています(下記関連記事を参照してください)。
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