先日の「地震頻発 ― 鳥取県中部」と題する記事で、グラフの説明に「M0以上」と書きました。すると、ある人から次のように訊かれました ―― 「マグニチュード0の地震なんてあるのか、マグニチュード0というのは地震が起きていないということではないのか」。
マグニチュード0の地震はありまぁす(à la 小保方)。それどころかさらに小さいマイナスの数字のマグニチュードもありまぁす。普段あまり目にすることがありませんが、2010年にアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル氷河下の火山が噴火し、ヨーロッパの航空路が大混乱に陥った当時、同国気象局が発表している火山地震情報にはマイナスのマグニチュードの地震がかなりリストアップされていました。
では、0やマイナスのマグニチュードの地震はどの程度の衝撃なのでしょうか。『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』(ランドール・マンロー著、早川書房、2015)に面白いたとえが載っています:
0: プロのアメリカンフットボールのチームが全速力で隣人のガレージの壁に激突する。
-1: アメリカンフットボールの選手1人があなたの家の木に激突する。
-2: 1匹のネコがドレッサー(化粧用の台、鏡と引き出し付き)から落ちる。
・・・
-7: 羽根が1枚ひらひらと地面に落ちる。
・・・
-15: 空気中を漂っている小さなほこりがテーブルの上に乗って静止する。
地震のマグニチュードは上方向にも定義上の限界はありません。しかし実際にはマグニチュード9クラスを越える大地震は起きていません。上記の書物は、マグニチュード15の地震は地球の重力による束縛エネルギーに匹敵するエネルギーを放出するので、もし発生したとしたら地球はバラバラになってしまうと示唆しています。
話は変わりますが、1等星、2等星など、星の明るさを示す尺度の「等級」にもマイナスはあります。北極星は +2.02等級ですが、冬空に輝くおおいぬ座のシリウスは -1.46等級、今年9月22日に最大光輝に達したときの金星は -4.5等級(金星による影)、満月の平均的な明るさは -12.7等級、そして全天で最も明るい恒星である太陽は -26.74等級です(『天文年鑑 2015年版』、誠文堂新光社)。