小惑星〝163899(2003 SD220)〟が12月24日に地球に接近することが世界中で報道されています。多くは大手のメディアではなくB級・C級の新聞や、UFOや陰謀論をあつかうウェブサイトです。接近の日がたまたまクリスマスのホリデイ・シーズンだから、ということで注目されているのかも知れませんが、この程度の大きさの小惑星のこの程度の接近は大して珍しいことではありません。
このブログでは小惑星が地球に2.0LD以内に近づく場合に取りあげてきました。その基準からすると今回の接近は遠すぎるのですが、今回は例外ということで ・・・
12月24日午後10時8分(日本時間)、小惑星〝163899(2003 SD220 = 2000 AD229)〟が地球に28.40LDまで接近します。メートル法では約1092万kmですから、「ニアミス」とは言い難い距離です(1LD=地球から月までの平均距離)。
この小惑星は2000年に発見されたもので、アテン群に属し、直径は1.1~2.5kmと推定されています。
最接近時の地球との相対速度は秒速7.84km(時速約2万8000km)と予報されています。
小惑星 | 推定直径 (km) |
接近日時 (日本時間) |
接近距離 (LD) |
---|---|---|---|
163899 (2003 SD220) |
1.1~2.5 | 12月24日22:08 | 28.40 |
この小惑星は地球と金星にしばしば接近します。現時点では2199年までの接近予報が公開されているのですが、地球や金星に衝突する可能性はありません。ヤルコフスキー効果があったとしてもです。
衝突しなくても、接近した際に重力の影響で地震や津波が起こるのではと心配する向きもあるようです。しかし、この小惑星が地球に及ぼす重力は太陽や月に比べれば無視できるほどの微々たるものです。大きな影響があるのであれば、小惑星〝162173 Ryugu (1999 JU3)〟に向かって飛行中の「はやぶさ2」の軌道にも影響が出ることでしょう。地球よりはるかに小さく軽いのですから。
発見前の1966年12月22日には、今回の接近よりも近い8.03LD(約310万km)まで地球に近づいたことが軌道計算でわかっています。この接近の前後1ヶ月(66年11月22日~67年1月22日)に世界で発生したM6以上の地震は22件、そのうちM7以上は4件でした(USGSのデータベースによる):
- 12月28日 M7.7 アントファガスタ (チリ)
- 12月31日 M7.8 サンタ・クルーズ諸島(ソロモン諸島)
- 12月31日 M7.1 サンタ・クルーズ諸島(ソロモン諸島)
- 1月5日 M7.0 モンゴル中央部
今回の接近よりも地球に近づくのは2174年12月22日午前7時6分(日本時間、不確実さは1分未満)で、接近距離は6.26LD(約240万km)です。
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