風土記は奈良時代初期に朝廷が全国に命じて編纂させた地誌です。現在までまとまった形で残っているのは、常陸、出雲、播磨、豊後、肥前の5ヵ国だけで、他の国々については一部が他の文書に引用されて伝わっており逸文と呼ばれています。
以下は、伯耆國風土記の逸文です。伯耆國は現在の鳥取県中部と西部に相当します:
伯耆の國の風土記に云はく、震動る時、鶏と雉とは悚懼ぢて則ち鳴き、山鶏は嶺谷を踰みて卽ち羽を樹てて蹬み踊る、と云へり。
漢字の読みは以下のとおりです:
震動る(なゐふる)、鶏と雉(かけときざし)、悚懼ぢて(おぢて)、則ち(すなはち)、山鶏(やまどり)、嶺谷(をたに)、踰みて(ふみて)、卽ち(すなはち)、樹てて(たてて)、蹬み踊る(ふみをどる)
秋本吉郎校注『風土記』(岩波書店、1982)の注釈を参考にして現代語に訳すと次のようになります:
伯耆の国の風土記によると、地震のとき、鶏と雉は怯え恐れて鳴き、山鳥は飛ばないで峰や谷に降りていて、羽を広げたまま地面を踊るように歩く、ということだ。
「地震のとき」とあるので、地震でまさに揺れている最中の鳥類の行動を書いているようにも受け取れますが、私は地震の前に動物に見られる異常行動、すなわち宏観前兆を書いているのではないかと思っています。そもそも、揺れの最中に牛や馬、鳥などが怯えて騒ぐのは至極当たり前のことでわざわざ風土記に記載するとは思えませんし、「山鶏は嶺谷を踰みて(山鳥は飛ばないで峰や谷に降りていて)」とあるのも、飛んでいる山鳥が揺れを感じてから地面に降りるとは考えにくいからです。
地震前の鳥の行動については、以下の過去記事もお読みください:
- 小鳥は人の周りに集まり、人は得体の知れない気持ち悪さを感じる (15年8月26日)
鳥取県中部で地震が連続して発生していますが、震源地はまさに旧伯耆国の領域です。
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