9月27日付「NASA: 火星についての重要な科学的発見」の続報です。
日本時間9月29日午前0時30分から行われたNASAの記者会見ですが、私も眠い目をこすりながらNASA TVをリアルタイムで視聴しました。会見の内容は報道などの下馬評どおりで、RSL(Recurring Slope Lineae、斜面に繰り返し現れる線状のパターン)現象に関するものでした。専門家にとっては「重要な科学的発見」ですが、生物やその化石、火星文明の遺跡などの発見を期待する一般の人たちにとってはさしたるインパクトがなく、ネットなどでは「NASAは何回、火星で水を発見すれば気が済むんだ」といった揶揄や皮肉も飛び交っています。♫何度目の発見か~(乃木坂46風)
惑星協会(The Planetary Society)のブログが、発表の内容を簡潔かつ具体的にまとめてくれていますので紹介します:
以下は上記ブログ記事からの抜粋(テキトー訳)です:
- RSLは火星の斜面に季節によって現れる細い筋状のパターンである。火星表面の広範囲に見られる。
- 火星周回衛星マーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter)に搭載されたHiRISE(High Resolution Imaging Science Experiment)カメラを使ったこれまでの研究で、RSLは気温が絶対温度で250°~300°(-23℃~+27℃)に達する暖かい季節に現れることが判明しており、それは水のような蒸発しやすい物質が関与していることを強く示唆していた。
- 今回論文として発表された研究は、マーズ・リコネッサンス・オービターに搭載されているCRISM(Compact Reconnaissance Imaging Spectrometer for Mars)分光計で得られたデータを使用し、RSLが出現している期間に水和塩(hydrated salts: 水分子を含む鉱物)が存在している証拠をつかんだ。
- 分光計のデータに最もよく合致する鉱物は、過塩素酸マグネシウム(magnesium perchlorate)、塩素酸マグネシウム(magnesium chlorate)、過塩素酸ナトリウム(sodium perchlorate)である。
- 過塩素酸塩(perchlorate salts)の存在は、火星の環境下で水の融点を絶対温度40°(-233℃)まで低下させうるので、水が液体になることを容易にする。
- 今回の研究成果は、現在の火星表面の広い範囲で、短期間ではあるものの液体の塩水が流れる条件が生じていることの非常に強力な証拠である。流れとはいっても、たぶん小川のようなものではなく、土壌中に拡散する湿り気のようなものかも知れないが。
- RSLは多様な場所と異なる地質学的環境で繰り返し出現するので、液体の水が補充される単一のメカニズムを特定するのは困難である。
- 今回の研究に携わった研究者たちは「潮解」という現象が水分の補給源である可能性が高いと考えている。つまり、過塩素酸塩(perchlorate salts)が大気中から水蒸気を吸収し、それが十分な量に達すると液体となって塩類を溶解するということである。
以下はRSLの画像と季節変化を示す動画です:
- Melas Chasma RSL forming on a fan of fine-grained material in HIRISE enhanced color image ESP_034962_1670
- Central Structures in Horowitz Crater (Terra Cimmeria) (GIF動画)
- Gullies in Palikir Crater (GIF動画)
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