2015年5月8日金曜日

箱根山の異変と富士山噴火の前兆伝承


箱根山の火山活動活発化にともなって、地元住民は「夜中にドーン、ドーンと音がした」、「イノシシがこの近辺だけ減ってる」、「硫黄の臭いがいつも以上」、「平均して温泉の温度が高い。2度くらい」などと異変を感じています:

住民が感じている異変のうち「イノシシがこの近辺だけ減ってる」というのを見て、富士山の噴火前兆伝承を思い出しました。『富士山の噴火 万葉集から現代まで』(つじよしのぶ、1992、築地書館)に「宝永噴火の前兆伝承」として載っている話です。著者は、「ガセネタかもしれない」と断った上で2つの伝承を紹介しているのですが、そのうちの1つが ―― 噴火直前に多くの動物が逃げ出した ―― という『落穂雑談一言集』に記録されている話です。

場所は富士山の東の裾野にある寺。時は噴火が始まる11月23日の前日、夜半過ぎ。住職が「人が数百人も通りすぎるような物音」を聞き外を見ると、「いく万という獣が富士山のほうから甲斐国をめざして走り過ぎていく」。夜明けが迫っても獣の列は続くのですが、ようやく通りすぎる獣がまばらになったころ、「富士山の主」と目される奇妙な動物が他の獣を追い立てるようにして通りすぎて行った。「変だなあと思っていると、富士山の噴火がはじまった。」

この「富士山の主」ですが、身長1丈(約3m)近く、二足歩行で手もある。背中に2本の角があり、身体じゅうに眼がある、という怪物です。

宝永噴火をおこしたのは富士山の側火山である宝永山です。場所は富士山の南東斜面で、伝承に登場する寺があった東の裾野に近い位置です。


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