冥王星(および太陽系外縁天体)探査機「ニュー・ホライズンズ」の冥王星最接近が7月に迫る中、NASAが臨時の記者会見を6月3日(現地時間)に開くと発表しました。会見内容の詳細は明らかにされていませんが、ハッブル宇宙望遠鏡による "surprising observations of how Pluto’s moons behave"(冥王星の衛星(複数)の振る舞いについての驚くべき観測結果)について、とだけ発表されています:
発表文には、"how these new discoveries are being used in the planning for the New Horizons Pluto flyby in July"(7月に迫っているニュー・ホライズンズの冥王星最接近の計画に今回の新発見(複数)がどのように反映されるか)についても論じるとも書かれているので、冥王星の衛星についての新たな知見を確認するためか、あるいは、それによってもたらされる危険を回避するために探査機の飛行コースを変更することが検討されているのかも知れません。
冥王星の衛星についてどのような発見があったのか、現時点では会見に出席すると発表されている人たちの業績や専門分野から想像するほかありません:
- John Grunsfeld: NASA副長官、元NASAチーフ・サイエンティスト、物理学者、宇宙飛行士として5回の宇宙飛行を経験。
- Mark Showalter: SETI Institute(地球外知的生命体探査協会)の研究者。土星や天王星の衛星などの6つの衛星と3つのリングの発見者(共同も含む)。
- Douglas Hamilton: 惑星の衛星とリングや、太陽系の起源と進化を研究。
- John Spencer: 冥王星の表面に複雑な炭化水素やニトリルの分子が存在する証拠を発見。冥王星がリングを持つ可能性を指摘。土星の衛星エンケラドスからの噴出物中に有機物を検出、冥王星の2つの新衛星の発見などに関与。
- Heidi Hammel: 海王星と天王星を研究した惑星科学者。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡計画(ハッブル宇宙望遠鏡の後継)など、広い分野で活躍。
私の憶測は、冥王星の衛星が、土星の衛星エンケラドスと同じように何らかの物質を軌道上に噴き出しているのではないか、それがニュー・ホライズンズの機体に害を与える恐れがあるため、あるいは、それを詳細に観測するために冥王星への接近コースを変更する必要が出てきたのではないか、というものです。
過去の例からすると、NASAの記者会見は期待はずれであることが多いので、あまり大きな期待を抱かずに6月4日午前2時(日本時間)を待とうと思っています。
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