2012年8月31日金曜日

気象庁の弁明 ― 日本と韓国 (続報)


8月29日付「気象庁の弁明 ― 日本と韓国」の続報です。

韓国気象庁が、台風15号の通過経路を自らの予報に合うように改竄したのではないか、との疑惑が浮上しています:

通過経路を改竄したのではないかとの指摘をまとめると次のようになります:
  • 台風の通過後に韓国気象庁が発表した8月28日午前9時、午後3時、午後9時の台風の中心位置は、米軍合同台風警報センター(JTWC)や日本の気象庁が発表したデータと比べ、経度が0.8~1.1度(約90~120キロ)東にずれていた。
  • 世界気象機関(WMO)、中国や香港の気象当局の発表も日米に近かく、韓国気象庁の発表だけが大きくずれている。
  • 「台風の進路予報は国によって大きな違いが出ることはあるが、台風の通過後に発表する実際の進路が経度で1度も異なるのはあり得ない。」

韓国気象庁や関係者は、上のような指摘に対して次のように反論しています:
  • 「誤差の可能性はあるが、最善を尽くして判断した結果だ。」
  • 「台風の中心が実際にどこにあったかについては、WMO台風委員会で関係国が集まり、最も確かな経路を決定する。それまではどの機関の発表内容が正確かは断定できない。」
  • 「西海上には観測設備がほとんどないため、台風の中心位置を決定する際に誤差が生じる可能性がある。」  [注: 「西海」は黄海に対する韓国内での呼称]

気象専門家は「台風予報と実際の進路を合わせようという圧力が働き、当初の誤った予報に最後までこだわり、このような事態が起きたのではないか。28日午後に李明博大統領が気象庁を訪問したため、気象庁が予報の正確度に敏感になったのかもしれない」と指摘しているとのことです。

韓国気象庁は過去にも予報内容に合わせて台風の進路を改竄して発表し、幹部の処分や辞任につながったことがあると記事は結んでいます。

以下のページで、日本の気象庁が発表している台風15号の経路(速報値)を確認できます。地図の右上のプルダウン・メニューで「第15号(1215)」を選択してください。韓国の発表と日本の速報値を比べると、上陸地点も大きく異なっていることがわかります。前者では北朝鮮南西部、後者では中国との国境に近い北朝鮮北西部です:

2012年8月30日木曜日

ギザの3大ピラミッドと3惑星整列


インターネット上に以下のような画像が流布しています:

Image Credit: Universe Explorers

画像には次のような説明がついています:
2012年12月3日の惑星の配列は、ギザのピラミッドの配置と完璧に一致する。現地時間12月3日、エジプトのギザの夜空 ・・・ 日の出の1時間前。この様な現象は2737年に1度しかおこらない。

オカルトやスピリチュアル系の話に毒されている人たちは、この様な現象から何らかの意味をくみ取ろうとするかもしれません。

しかし、12月3日にギザのピラミッドを訪れても、この様な光景を見ることはできないのです。すでに天文学関係のウェブサイトやブログで明らかにされていることですが、以下にその理由をまとめてみます:
  • 12月3日、夜明け前の南東の空で、水星-金星-土星が直線上にほぼ等間隔で並ぶことは事実である (実際には直線から少しずれている)。しかし、これら3惑星を結ぶ直線は垂直に近い角度で地平線と交差する。ギザの緯度を考慮に入れても、流布している画像に見られるような水平に近い角度で並ぶことはない。したがって、3大ピラミッドの各々の真上に惑星が一つずつ輝くように見えることはない。
  • 流布している画像には、向かって左からメンカウラー王のピラミッド、カフラー王のピラミッド、クフ王のピラミッドが並んでいるので、ギザの3大ピラミッドを南西(あるいは南南西)の方向から北東に向かって撮影したものである(以下のピラミッド配置図を参照してください)。このことは、画面左側に「王妃のピラミッド」群がシルエットとして写っていることからも確認できる。一方、3つの惑星が並ぶのは南東の空であるので、流布している画像のように見えることはない。


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海底噴火のおそれ ― 青ヶ島南東沖


8月26日、青ヶ島(東京都、地図)の南端から南東方向約1300m付近(水深63m)に変色水域が見つかりました。これまで変色の見られなかった水域です。噴火の恐れがあるため、29日付で「火山現象に関する海上警報」が出されました。さらに、島の北端の海岸付近に多量の変色水、島の南東端東側の海岸付近にも色水が確認されています:

伊豆諸島では、青ヶ島の南にあるベヨネーズ列岩地図)付近で始まった噴火が島づたいに徐々に北上して伊豆大島・三原山の噴火につながる傾向があるという話を本で読んだことがあります。ベヨネーズ列岩から伊豆大島までの一連の噴火が一つのサイクルをなしているのだそうです。このサイクルが繰り返されているうちに、噴火の北上が伊豆大島では止まらずに伊東沖の海底火山、さらに本土に上陸して箱根山や富士山の噴火に至るということです。

青ヶ島はどのようなところでしょうか。青ヶ島村のホームページを開くと、冒頭にフラッシュで次のようなメッセージが流れます。島の特徴を簡潔かつ的確に伝えていると思います:
ここは東京都青ヶ島村無番地。
日本一人口の少ない村です。
二重式火山でできた世界でもめずらしい島なのです。

2012年8月29日水曜日

気象庁の弁明 ― 日本と韓国


台風15号(アジア名:ボラベン、Bolaven)は日本の南西諸島や朝鮮半島に被害をもたらしました。この台風については、沖縄気象台が8月25日に異例の記者会見を開き、「沖縄本島地方の観測史上で過去最大規模となり、記録的な暴風が吹く恐れがある」として厳重な警戒を呼びかけました:

ところが、台風の通り過ぎたあとの沖縄県民の感想は「思ったほど強い台風ではなかった」というものだったようです:

沖縄気象台は「中心気圧が910ヘクトパスカル、最大瞬間風速70メートルの猛烈な風が吹き荒れる」と予測していたのですが、実際は、「伊是名村で27日午前0時ごろに41.5メートルの最大瞬間風速を観測。26日午後8時半ごろ、台風の目に入ったとみられる名護市でも気圧は935ヘクトパスカルを記録するにとどまった」 とのこと。この点について、気象庁は「ほかの台風でもあることで、差は想定の範囲内だ」、沖縄気象台は「観測値は低いが、気象衛星のデータなどから『最大級の警戒』が必要な台風だったことは確か」と弁明しています:

複雑系である気象現象を正確に予測することは難しい。良い方に外れても、悪い方に外れても責められる気象庁や気象台はつらい立場だと思います。でも一度でもこういうことがあると、本当に観測史上最大級の台風が来たときに、住民が気象庁や気象台の発表を過小評価して避難が遅れるということになりかねません。

お隣の韓国では、気象庁がテレビ局に批判されています。台風15号が接近するさなか、テレビ局が気象庁に「電話取材したところ、気象庁は非常事態にもかかわらず通常勤務(土日はお休み)で危機感が無い」。それに対して気象庁は、「160余名の非常事態態勢での勤務中」で、テレビ局の報道は「非常事態での勤務中に無理な資料を要求したために記者と実務者間で些少な意見の食い違いがあったことによるもの」と弁明しています:

どうやら、テレビ局の記者が、自分の要求した資料を気象庁が提供してくれなかったために、批判的な報道をしたというのが真相のようです。


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アカエイ大量発生 ― 千葉県・九十九里浜


千葉県の九十九里浜でアカエイが大量発生しています。8月11日ごろから海水浴客などがアカエイに刺される被害が急増し、「九十九里町では今月22日までに約330人がアカエイに刺されたほか、山武郡市内の各自治体でも1日5~6件の被害が報告されている」とのことです:

九十九里浜のある房総半島の東側では、今年6月、大量のイワシが打ち上げられ、7月にはアカエイの大群が川を遡っています。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。


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岩手山8合目の湧水枯れる ― 岩手県


岩手県北西部にある活火山・岩手山地図)の8合目にある「御成清水」と呼ばれる湧水が8月22日から一切出なくなっています。原因は雨量の減少とされています。テレビ岩手の報道によれば、御成清水は「例年この時期に水量が減り、2年前にも1週間ほど水が枯れた」とのこと:

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温泉の温度が急上昇 ― 台湾・新北市


台湾北部の新北市(地図)にある温泉の温度が、ここ1ヵ月で40度から80度に急上昇しているとのことです。「天然温泉の水温がなぜ突然上昇したのか、すでに専門家に調査を依頼しているが、まだ結果は出ていない」とのことです:

新北市の東、約230kmには西表島北北東海底火山があります。また、台湾の東海岸にある花蓮市(地図)の沖合は地震の多発地帯です。


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2012年8月28日火曜日

ヘビが原因の停電 ― 新潟県、山形県


今月半ば以降、東北地方の日本海側でヘビが原因の停電が相次ぎました。東北電力によると、「蛇が送電設備に接触したことが原因となった停電は、(新潟)県内では例年10件前後起きているといい、今年は6件が発生している」、「ヘビが高圧線に触れたことが原因で停電するケースは(山形)県内でことしに入って11件目」とのこと。

▼8月16日午前4時すぎ、新潟市中央区(地図)― 「原因となったヘビは体長80センチほど。電柱の上でスズメのひなをくわえた状態で死んでいた」:

▼8月21日午後7時20分ごろ、山形市上反田(地図)― 「高さおよそ15メートルの高圧線の保護カバーの中に体長およそ60センチほどのシマヘビとみられるヘビが侵入した」:

▼8月27日午前9時前、新潟市西蒲区(地図)― 「電柱を上ったヘビが高圧線に接触し、漏電した」:

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北方領土の「イワン雷帝」が噴火 (続報)


8月17日付「北方領土の『イワン雷帝』が噴火」の続報です。

択捉島を訪れていた日本の専門家が、焼山(ロシア名: Ivan Grozny = イワン雷帝地図地図)の噴火を確認しました。噴煙が高さ5000mまで上がり、「今後、風向きによっては北海道東部に火山灰が降ったり、上空を飛行する航空機の運航などに影響が出たりするおそれがある」とのことです:

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超新星爆発まぢかのベテルギウス


ベテルギウスオリオン座の一等星で、猟師オリオンの右肩(オリオン座の長方形の向かって左上隅)に相当する位置にあります。質量は太陽の約20倍、直径は太陽の約1000倍ある赤色超巨星で、仮に太陽系の中心にベテルギウスをおいたとするとその表面は木星の公転軌道近くにまで達し、地球や火星などはその内部に飲み込まれてしまうほどの大きさがあります。

ベテルギウスは恒星としての活動が不安定になっており、最近、さまざまな異変が観測されています。以下は、ウィキペディアからの引用です:
2009年時点のベテルギウスは、15年前の測定時と比べると15%も小さくなっており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった。また、2010年1月にはNASAが、ベテルギウスが変型している事を示す観測写真を公開した。ガスが流出し表面温度が不均一になるなど、恒星が不安定な状態にあることが示された。近年の観測や研究により、その形状は球形ではなく、大きな瘤状のものをもった形状であるとされている。

このブログ記事のタイトル「超新星爆発まぢか」を見て「マジかよ~」と思われるかたもおられるかも知れませんが、「まぢか」と言っても天文学的な時間スケールでの話です。明日かも知れませんし、100万年後かも知れません。ベテルギウスまでの距離は640光年とされていますから、超新星爆発が今日おこったとしても、われわれがそれを知るのは640年先のことになります。もしかしたら、ベテルギウスはすでに爆発していて、その強烈な光や放射線が地球に向かって進行中なのかも知れません。

以下のニュース記事には、最近のベテルギウスの様子を観測結果にもとづいて再現した動画が掲載されています。北京で開かれた国際天文学連合(IAU)の会合で、8月24日にフランスの天文学者のチームが発表したものです。7年半にわたるベテルギウスの変化を、32秒間に圧縮して再現しています:

以下の動画は、ベテルギウスの超新星爆発が地球上のわれわれからはどのようにみえるかを再現しています:

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2012年8月17日金曜日

北方領土の「イワン雷帝」が噴火


8月15日から16日にかけての深夜、日本の北方領土・択捉島の中部にある火山・焼山(ロシア名: Ivan Grozny (〝Ivan the Terrible〟) = イワン雷帝地図)が噴火を始めました。今のところ、火山灰の噴出が主で、溶岩などの流出はなく、近隣居住地では硫化水素ガス(報道によっては〝hydrogen peroxide〟 = 過酸化水素)の臭いが漂ったもののしばらくして解消したとのことです:

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2012年8月14日火曜日

十勝岳で再び発光現象


北海道の十勝岳(地図)で、8月13日午前0時45分ごろから約1時間にわたって、火口付近が発光し明るく見える現象が観測されました。「その後は雲に覆われて確認できていない」とのこと。「火口付近の硫黄や火山性ガスが燃焼したことが原因」とみられています。

札幌管区気象台は、現時点では「地震や空気の振動といった噴火の兆候はないが、発光を繰り返しながら、火山活動が活発化していく可能性はある」としています。十勝岳では6月30日から7月4日にかけて、同じ火口で同様の発光現象が観測されています:

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2012年8月13日月曜日

金星食 ― 8月14日未明


日本時間で8月14日(明日)未明、東アジアから北米にかけての広い範囲で金星食を見ることができます。日本では、夜明け前の東の空の低い位置で、細い月(下弦と新月の中間)が金星(明けの明星)の前を横切ります。東京の場合、午前2時44分から3時29分にかけて、金星が月の後ろに隠れます。詳しくは以下の国立天文台の資料をご覧ください:

月と同じように金星も満ち欠けします。現在の金星は、下弦の月と同じように地球に向いた面の半分が輝いている状態です。大気の揺らぎが少なければ、双眼鏡でも金星が半月状に欠けているのが確認できるかも知れません。

金星食を特別なものと見なして地震などの発生と結びつける向きもありますが、惑星が月に隠される現象(惑星食)はそれほど珍しいものではありません。『天文年鑑』(誠文堂新光社)によれば以下のとおりです:
今年1年間に起こる惑星食は、世界的には、水星食4回、金星食1回、火星食1回、木星食8回である。準惑星の冥王星の食は10回、ケレス食は2回。主な小惑星ではパラス食が2回ある。そのうち日本で見られるのは7月15日昼の木星食と8月14日未明の金星食だけである。

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2012年8月5日日曜日

〝恐怖の7分間〟迫る (その2)


8月4日付「〝恐怖の7分間〟迫る (その1)」からの続きです。
時速200マイル(320km)まで減速すると爆発ボルトによってパラシュートが切り離され、スカイクレーンは1秒間の自由落下をします。続いて逆噴射ロケットが点火します。 
逆噴射ロケットは降下速度を時速1.5マイル(2.4km)まで低下させるとともに、横方向の力を加えて、より速い速度で落下してくるパラシュートを回避します。 
スカイクレーンが火星の地表から60フィート(18m)まで降下すると、蜘蛛が糸を伸ばすように、3本のナイロン製ロープにつるされたキュリオシティが少しずつ下に向かって下ろされます。スカイクレーンは、キュリオシティを20フィート(6m)下にぶら下げた状態で降下を続けます。キュリオシティが地表に接触すると爆発ボルトによってロープが切断され、キュリオシティは外部との最後の物理的接続を失います。スカイクレーンは飛び去り、火星の赤い砂に突入して、その驚くべき使命を終えます。 
びっくりするぐらい複雑にみえるかも知れませんが、「複雑にみえるシステムが実際には火星着陸をシンプルにしているのです」とセル氏は説明します。 
バイキング1号バイキング2号マーズ・フェニックス・ランダーなどのミッションでは、逆噴射ロケットを使いながら高度を下げ、着陸脚を使って火星表面に降り立ちました。その他のミッションではエアバッグが使われました。キュリオシティにはそれらの方法が使えませんでした。 
「キュリオシティのように大きなサイズの場合、(強力な逆噴射ロケットが必要となるため)逆噴射ロケットは大量の埃を舞上げて探査機やその搭載機器を危険にさらします」とセル氏は説明します。「そのようなリスクに加えて、(着陸装置の上に探査車を搭載する方式では)キュリオシティのように大きく重い探査車が着陸装置から傾斜路を通って火星表面に下りる際の危険もあります」。  
それらのリスクを、パスファインダー、スピリット、オポチュニティはエアバッグを使うことによって回避しました。しかし、キュリオシティはエアバッグを使うには大きすぎました。 
 [訳注: 探査車本体の重量は、ソジャーナ(マーズパスファインダー)が10.5kg、スピリットとオポチュニティが174kg、キュリオシティは950kgです。]
「キュリオシティの着地をやわらげるのに十分な大きさのエアバッグは、打ち上げるには重すぎ、また費用もかかりすぎます。それに加えて、エアバッグが着地の負荷に耐えられるように非常にゆっくりと落下させる必要がありますし、キュリオシティが車輪を下にした姿勢でエアバッグが静止する必要もあります」。 
セル氏は、キュリオシティにとってスカイクレーン方式は理にかなっていると語っている。しかし、今でも彼は心配で夜も良く眠れないでいる。

スカイクレーン方式は複雑な手順のどれか一つでもうまく作動しないと(Zero Margin of Error)、25億ドル(約2000億円)を投じたプロジェクトが水泡に帰します。すべては、キュリオシティが火星大気圏に突入してから着陸するまでの7分間で決まるということで、関係者はこの時間を〝恐怖の7分間〟(Seven Minutes of Terror)と呼んでいます。

百聞は一見にしかず、以下の動画をご覧ください。スカイクレーン方式による火星着陸や、着陸後の探査活動が描かれています。高精細の動画ですので、全画面表示で見ることをお勧めします:

以下は、キュリオシティの着陸手順を1枚にまとめた画像です:

キュリオシティが火星に着陸するとき、火星から地球までの距離は2億4800万kmあり、キュリオシティの発した電波信号が地球に届くまで13.8分かかります。

うまくいってほしいとは思いますが、なんど考えてみても、すべてがうまく行くとは思えません。着陸時にキュリオシティと地球の間の通信を中継することになっている火星周回衛星〝マーズ・オデッセイ〟が、7月11日に原因不明のセーフ・モードに陥るということがありました。現在は正常に復帰しているのですが、不吉な前兆のように感じます。

キュリオシティが搭載している観測機器のうち、私が注目しているのはChemCam(Chemistry and Camera)です。これは、探査車から7mの範囲内にある物体にレーザー光線を照射して蒸発させ、その時に発する光を分光分析して物体の成分を知る装置です。以下はキュリオシティがその装置を使っている様子の想像図です。もし現場に火星人がいたら、キュリオシティを攻撃的・敵対的な侵略者と見なすかも知れません(笑):

(完)


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2012年8月4日土曜日

〝恐怖の7分間〟迫る (その1)


大量のオリンピック報道に紛れてあまり注目されないかも知れませんが、日本時間8月6日(月)午後2時31分、アメリカの火星探査車〝キュリオシティ〟(好奇心)が8ヶ月半の飛行を終えて火星に着陸します。

スカイクレーンにつるされて火星に降下するキュリオシティ (クリックで拡大)
Image Credit: NASA/JPL-Caltech

アメリカがこれまでに火星に送り込んだ3台の探査車 ―― ソジャーナ(マーズ・パスファインダー)、スピリットオポチュニティ ―― は、単純で安価なエアバッグ方式で火星表面に「落とされ」ていましたが、今回のキュリオシティは複雑な手順のスカイクレーン方式で火星表面に軟着陸します。この込み入った方式の概略と、なぜこの方式が採用されたのかについて、以下の資料に説明があります:

以下に、この資料の主要部分をテキトー訳します:
〝マーズ・サイエンス・ラボラトリー〟(火星科学研究所)という名でも知られるキュリオシティは、地球以外の惑星に着陸する探査機としてはこれまでで最大です。キュリオシティが大きいのは、それが解明しようとしている謎が大きいからです。その謎とは ―― 火星はかつて生命を宿していたのか、あるいは現在も生命を宿しているのか ―― です。 
火星に安全に着陸するために、キュリオシティを乗せたランダーは惑星間飛行速度である時速1万3000マイル(2万1000km)から時速1.5マイル(2.4km)まで減速しなければなりません。総重量1トンの観測機器をこのように減速するには、複雑な手順を精確に遂行する必要があります。重要な役割を果たすのは ―― 白熱状態になるヒートシールド(熱遮蔽板)、巨大なパラシュート、76個の爆発ボルト、そして、スカイクレーンです。 
ジェット推進研究所で大気圏突入・降下・着陸の副責任者を務めるスティーブ・セル氏は次のように語っています。「火星の大気圏への突入から火星表面への着陸まで、すべては7分間で終わります」、「ランダーに搭載したコンピューターがすべてを指揮します。複雑な手順のうちの一つでも失敗すればゲーム・オーバーです」。 
ゲームの計画は次のようなものです。 
スカイクレーン ―― 火星探査車キュリオシティに取り付けられている8つのロケットエンジンからなるジェットパック ―― を搭載したカプセルは、火星の大気との摩擦によって時速1万3000マイル(2万1000km)から1000マイル(1600km)まで減速します。この時、カプセル底部のヒートシールド(熱遮蔽板)は、大気との摩擦によって華氏3800度(摂氏2100度)の白熱状態になります。続いて直径60フィート(18m)のパラシュートが開きます。このパラシュートはカプセルと長さ160フィート(49m)のラインで結ばれています。ヒートシールドが投棄されると、カプセル内部のキュリオシティは下に広がる新たな住処を初めて見ることになります。 
このパラシュートは、地球外に送られたものとしては最大・最強で、キュリオシティをつり下げた場合に生じる6万5000ポンド(約30トン)の力に耐えることができるスーパーシュートと言うべきものです。

続く