1982年に金星に着陸した旧ソビエト連邦の金星探査機〝ベネラ 13号〟が撮影した金星表面の写真を詳細に比較・分析したところ、サソリに似た形状のもの(私に言わせればエビ)など、何種類かの生物とみられるものが写っていたという論文を、ロシアの著名な科学者・技術者が発表しました:
- Life Spotted on Venus - Russian Scientist
- Is there life on Venus? Not in reprocessed Venera-13 images. (写真あり)
ベネラ 13号が同じ場所を時間をおいて撮影した複数の写真を詳細に比較したところ、生物のように動いているものがいくつも見つかったという内容です。もちろん、探査機が着陸した際に舞い上がったほこりの落下や、着陸地点に吹いていた弱い風の影響も考慮されています。
上記(1)は RIA ノーボスチ通信の英語版の記事ですが、ロシア語版には〝サソリ〟の写真が掲載されています。
上記(2)はアメリカの惑星協会(The Planetary Society)のブログ記事です。通常、この種のトンデモ説は相手にしないが、論文を発表した Leonid Ksanfomaliti 氏が惑星探査の分野で実績のある科学者・技術者であるため検討してみたとのこと。結論は、言うまでもなく否定的です。
理由は、いくつかありますが、一つはベネラ 13号が2種類の搬送波を使って写真を送信していたこと。同じ画像であっても、搬送波が違うと差が出てしまうことがあるのだそうです (アナログ方式の通信だった?)。さらに、Ksanfomaliti 氏がベネラ 13号の写真に対して、ノイズの影響で画像が乱れている部分を他の写真から補ったり、過度の鮮鋭化を施すなどの画像処理をおこなっていること。そのような処理がおこなわれた画像の細部どうしを比較して差異が見つかったとしても、もはや意味のある情報とは言えません。
画像のコントラストやシャープネスを極端に強くしたりすると、存在しないものが見えてくることがあるので注意が必要です。良い例が、昨年のエレーニン彗星の騒ぎです。一部のトンデモ屋さんは、そのような画像処理をおこなった結果彗星の周囲に現れた暈のようなものを見て、エレーニン彗星は電磁バリアーに守られている巨大宇宙船だなどと宣ったものです(笑)。
ベネラ探査機の撮影した金星の地表の写真などは以下を参照してください:
- 金星探査の歴史
- 灼熱の惑星に挑む(3)
- First Pictures of the Surface of Venus (金星表面の最初の写真)
- Drilling into the Surface of Venus (金星の地表を掘削する)
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