ハーバード大学の理論物理学者で宇宙物理学と宇宙論を専門とするアヴィ・ローブ(
Avi Loeb)博士が、自身が筆頭著者として発表した
論文について解説している記事です:
以下は記事の概略です ——
この新たな恒星間侵入天体の軌道は、いくつかの特異な特徴を示している。
3I/ATLAS の軌道面は、地球の軌道面(いわゆる黄道面)から5度以内にある。あらゆるランダムな方向からこの一致が見られる確率は 0.2% である。
3I/ATLAS は、金星(0.65au、1au は地球と太陽の距離)、火星(0.19au)、木星(0.36au)に異常に接近するようになっている。
3I/ATLAS は、地球に対して太陽の反対側で近日点を通過する。これは、天体が最も明るいとき、および(太陽によって)隠れた場所からなんらかの機器を地球に送るとき、地球上の望遠鏡による詳細な観測を回避するための意図的なものである可能性がある。
近日点速度68km/秒での逆行軌道は、地球が太陽の周りを秒速30kmで周回する方向と逆方向であり、地球と 3I/ATLAS の速度差は秒速98kmになる。したがって、地球人が化学燃料ロケットに乗って 3I/ATLAS に最接近着陸することは現実的ではない。なぜなら、現在利用可能な最先端ロケットでさえ、その速度の3分の1程度にしか達しないからである。
3I/ATLAS が太陽系からの脱出を達成するために加速する場合と、高速から減速して太陽に束縛されたまま地球のような惑星に接近する場合の両方で、最適な地点は近日点である(
オーベルト効果)。 3I/ATLAS にとってこの最適な地点は、太陽によって地球人の視界から隠されている。
3I/ATLAS は、明るい天の川銀河中心の方向から飛来した。背景の星々が密集していたため、2025年7月以前は検出が困難であった。もし天文学者が 3I/ATLAS を 1年以上早く検出していたなら、その進路上で 3I/ATLAS に接近したり迎撃したりできる宇宙船を打ち上げる機会があった。しかし、今となっては、化学燃料ロケットではそのような接近・迎撃は不可能である。
3I/ATLAS から金星、火星、または木星に向けて機器を打ち出すために必要な速度は毎秒 5km 未満であり、大陸間弾道ミサイルでも達成可能である。
3I/ATLAS の軌道が黄道面とほぼ一致することは、宇宙船が比較的安全に地球にアクセスできるため、地球外知的生命体に様々な利点をもたらす。地球の観測者にとって近日点における 3I/ATLAS が太陽に隠されることは、宇宙船が秘密裏に加速や減速を実行することを可能にする。これは、星間宇宙船が減速して太陽系にとどまるための最適な戦略である。最適な地球への到着は、2025年11月下旬または12月上旬となる。
論文は、3I/ATLAS が技術的人工物であるという、注目すべき、しかし検証可能な仮説に基づいている。私と共著者 2名は必ずしもこの仮説を支持しているわけではない。
もしこの人工物であるとする仮説が正しいとすれば、2つの可能性が考えられる。1つは、3I/ATLAS の意図が全く善意によるものである場合、もう1つは悪意によるものである場合である。前者の場合、人類は何もする必要はなく、この恒星間メッセンジャーの到来を両手を広げて待つだけだ。深刻な懸念を抱くのは後者である。
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