2016年9月7日水曜日

コマンドル諸島近海 M6.3 とプレートテクトニクス


9月6日午前7時54分ごろ(日本時間)、ロシア領コマンドル諸島(コマンドルスキー諸島)近海で M6.3 の地震が発生しました(震央地図)。震源の深さは12.3km:

発震機構解を見ると、プレート境界近傍であるにもかかわらず、逆断層ではなく横ずれ断層による地震のようです。震源付近ではアリューシャン海溝に太平洋プレートが沈み込んでいますが、その沈み込み方の特徴が横ずれ断層と整合的です。以下は、『プレート収束帯のテクトニクス学』(木村学著、東京大学出版会、2002)からの引用です:
アリューシャン海溝の西部では、太平洋プレートが斜めに沈み込んでおり、西端に近い部分では、ほとんどトランスフォーム断層のようになっている。この北側のベーリング海はコマンドルスキー海盆である。この海域では海溝に平行な横ずれ断層が発達している。コマンドルスキー海盆は斜め沈み込みに伴う前弧スリバーの移動によって拡大した背弧海盆である。アリューシャン列島の前弧域は斜め沈み込みによってブロック化しており、それぞれのブロックは時計まわりの回転をしている。また、西端のアリューシャン列島はカムチャツカと衝突している。

アリューシャン海溝の西端に近い部分では
太平洋プレートの沈み込む方向がほとんど海溝と平行になっている。
(USGSの震央地図にプレートの移動方向を加筆)

前弧スリバーとは、海溝に平行な細長い地塊で、マイクロプレート化して海溝と平行に移動するものを指す言葉です。以下は、『図解・プレートテクトニクス入門』(木村学・大木勇人著、講談社ブルーバックスB-1834、2013)からの引用です:
斜め沈み込みでは、海洋プレートが上盤プレートを摩擦で水平方向にこすりながら沈み込むことになります。その結果、上盤プレートの海溝に沿った帯状の部分が、水平方向に力を受けます。すると、海溝から少し離れたところに平行な横ずれ断層ができます。海溝から横ずれ断層までのプレート部分は、前弧スリバーとよばれます。前弧スリバーは、独立した小さなプレートのようにふるまい、海溝に沿って平行にスライドするのです。前弧というのは、島弧の前側(海溝側)を指す言葉です。

わが国の北方領土4島のうち、歯舞諸島と色丹島は前弧スリバーの上にあり、太平洋プレートの斜め沈み込みによって西に移動しています。また、根室半島は前弧スリバーに乗って西に移動してきた島が北海道に衝突したものです。

余談ですが、今回の地震の震源付近には、ハワイ諸島から連なる天皇海山列が沈み込んでいます。私は、天皇海山列は日本人の学者が発見して命名したのだと思い込んでいたのですが、実はアメリカ人の学者が戦後に命名したものだそうです:

海山の沈み込みと地震の関係については以下をどうぞ: