6月5日付の記事「電場を感知するハチ」で、ハチやアリなどの昆虫が地震を予知する能力を持っているかも知れないことを紹介しましたが、南米ベネズエラ(地図)の先住民には、蚊が大地震を予知するという伝承があったようです。
1800年ごろ、ドイツの博物学者・探検家・地理学者であるフンボルトが、ベネズエラのオリノコ川の岸辺で体験したできごとです:
さんざん我々を悩ませてきた憎むべき蚊が、ある日とつぜん姿を消した。最初は皆この出来事に大喜びして、快適な環境で仕事がはかどるだろうと祝い合った。だが、次の瞬間、ある恐怖が心の中に芽生えた――ひょっとすると、何か自然界の秩序が狂ったのではなかろうか?
そこでインディアンの古老に聞いてみると、蚊がいなくなったのは大地震の前触れにちがいない、と言いきるではないか。これには皆おおいに震えあがって、どんなかすかな葉ずれの音も聞きもらすまいと、しばらくじっと耳をすませた。やがてあたりに蚊の群れが戻ってきた時、我々は狂喜してこれを歓迎した。
ヘルムート・トリブッチ著『動物は地震を予知する』(朝日選書 277、朝日新聞社、1985)から引用
結局、この時は大地震が起こることはなかったのですが、興味深い逸話です。
フンボルトの一行が体験した蚊というのは、私たちが日常生活で経験するような1~2匹の蚊ではなく、群れをなして人の周囲を飛び回り、特に顔のまわりにまとわりつくような多数の蚊です。夏にシベリアを訪れた先輩に聞いた話では、頭部を覆う防虫ネットなしでは、口も開けられず、息もできないほどだとのこと。蚊ではないですが、私も某南の国の砂漠でハエの群れに取り巻かれて同じような経験をしました。鼻や口の中にハエが入ってくる不快感といったら ・・・ 閉口しました。
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