2008年12月10日水曜日

電離圏にみられる地震前駆現象

電離圏(電離層)の変化から地震を予知しようという研究は、フランスやロシアが先行しており、日本は取り残されている感がありましたが、日本の研究者(現在は台湾の大学に所属)を中心とするチームが日本の人工衛星(「ひのとり」)を使って研究した成果がAGU(米国地球物理学連合)の発行する『JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH』誌に11月25日付で掲載されています:
JAXA(宇宙航空研究開発機構)のサイトにも紹介記事が掲載されています:
上記JAXAの発表から引用します ――
「ひのとり」による観測期間中、フィリピンで発生したマグニチュード6.5以上の3つの地震に伴う電離圏電子温度の変化について調べた結果、地震の発生約5日前から震央上空周辺の電離圏電子温度が通常の状態(電子温度経験モデル温度)から低下しはじめ、地震発生日にはその差が最大となり、地震後約5日をかけてまた通常の温度に回復することが見出されました。「ひのとり」による観測結果により地震前兆電離圏擾乱の存在が多くの人に納得できる形で示されました。
(中略)
地震によっては電離圏に影響が見られない時もありましたが、地中深く起こった地震、海岸から遠く離れた場所で起こった地震の場合でした。また、磁気嵐が発生すると磁気嵐の影響と地震の影響が区別ができない場合があるようです。
このような観測事実は、今年5月の四川大地震の前に観測されていた変化など、これまで他国の研究者が発表してきた観測データとよく似ていると思います。

なお、「ひのとり」は1981年2月に打ち上げられ、1991年7月に落下した人工衛星で、太陽硬X線フレア、太陽粒子線、X線バーストなどの観測を目的としていました。重さは188kgで、月周回衛星「かぐや」などに比べると比較的小型の衛星でした。