2008年12月15日月曜日

地震データが示す恐るべき傾向!?

以前、日本テレビ系列で『特命リサーチ 200X』という番組が放映されていました。その中で、様々な調査をおこなう架空の会社として『ファー・イースト・リサーチ(F.E.R.C./極東リサーチ株式会社)』が登場していたことを、記憶されている方も多いと思います。これと似たような調査チーム"Horizon Project"がアメリカにあります。

この調査チームが次のような報告をしています:
まとめると、「USGS(米国地質調査所)のデータでは、死者数の多い破壊的な地震がここ数年で急激に増えており、地球のテクトニック・システムが前例のない変化を起こそうとしていると考えられる」という内容です。この報告に添えられている地震数の推移を示したグラフの拡大版が下記にあります:
このグラフを見る限り、たしかに2000年以降に地震の数が激増しています。本当なのでしょうか。このグラフは、USGS(米国地質調査所)が提供している下記のリストに掲載されているマグニチュード6から8までの地震の数を示しています。
注意しなければいけないのは、このUSGSのリストは冒頭に"Selected earthquakes of general historic interest"と明記されている点です。一般の歴史的関心の高い地震を選択したリストであって、すべての地震を公平に網羅したものではないということです。最近の地震ほど一般の関心は高いでしょうし、観測態勢の整っていない古い時期の地震ほど記録が少ないことは容易に想像されます。したがって、この"Horizon Project"が提示したグラフは、地震が近年急増していることを証拠立てるものではない、と言えます。

USGSは、地震数の統計表を提供しています:
このページの中程にある"Number of Earthquakes Worldwide for 2000 - 2008"という表を見てください。期間は短いですが、世界中で発生した地震の数をマグニチュード別に示しています。マグニチュード6クラス以上の地震数に大きな変化はありません。むしろ、マグニチュード3、4、5の数が2004年以降増加しています。

もう一つ注意していただきたいのは、"Horizon Project"のグラフとUSGSの表では、前者の方の地震数が少ないことです。前者の縦軸は地震数の目盛りが40までしかありません。一方、後者の表では、マグニチュード6以上の年間地震数は常に100を越えています。この点だけを見ても、"Horizon Project"がグラフ作成に使ったUSGSのリストが、"selected earthquakes"であったことが明らかであろうと思います。

かつて放映された『発掘!あるある大事典』という番組でねつ造騒動がありましたが、もし日本のテレビ局が上記のようなデータを使って地震番組を作ったとしたら、ねつ造とはいわないまでも視聴者の非難を浴びることになるでしょう。

Photo: Courtesy National Oceanic and Atmospheric Administration; Image source: Earth Science World Image Bank