2008年12月25日木曜日

アポロ8号から40年

今から40年前の1968年12月21日、アポロ8号は3人の宇宙飛行士を乗せてフロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げらました。そして、月のまわりを10周したのち、同月27日に無事地球に帰還しました。有人宇宙船が月の周囲を飛行したのは、これが最初です。このとき撮影された"Earthrise"(地球の出)の写真は、20世紀のもっとも有名な写真の一つとなり、多くの人びとの宇宙観、地球観、人類観に大きな影響を与えました。

月を周回中にクリスマスを迎えたアポロ8号の乗組員は、地球に向かってメッセージを送ってきました。それは、旧約聖書創世記の冒頭、神による天地創造を記述した最初の10節を交互に朗読するというものでした:
In the beginning God created the heaven and the earth. And the earth was without form, and void; and darkness was upon the face of the deep. And the Spirit of God moved upon the face of the waters.

And God said, Let there be light: and there was light. And God saw the light, that it was good: and God divided the light from the darkness. And God called the light Day, and the darkness he called Night. And the evening and the morning were the first day.

And God said, Let there be a firmament in the midst of the waters, and let it divide the waters from the waters. And God made the firmament, and divided the waters which were under the firmament from the waters which were above the firmament: and it was so. And God called the firmament Heaven. And the evening and the morning were the second day.

And God said, Let the waters under the heaven be gathered together unto one place, and let the dry land appear: and it was so. And God called the dry land Earth; and the gathering together of the waters called he Seas: and God saw that it was good.
最後にフランク・ボーマン船長が次のように付け加えました:
And from the crew of Apollo 8, we pause with good night, good luck, a Merry Christmas, and God bless all of you, all of you on the good earth.
アポロ8号の飛行士たちは、月のそばから遥か彼方の地球を眺めて、地球が荒涼とした宇宙の中でオアシスのように貴重な存在であるという実感を、聖書の文言に託したのだと思います。搭乗員の一人であったジェームズ・ラベル飛行士は、ヒューストンの管制センターとの交信で次のように話しています:
The vast loneliness up here on the moon is awe-inspiring. It makes you realize just what you have back there on earth. The earth from here is a grand oasis through the great vastness of space.
アポロ8号が打ち上げられた1968年はアメリカにとって非常に困難な年でした。4月4日にキング牧師、6月6日にはロバート・ケネディ司法長官が暗殺され、ソビエト連邦との冷戦は激化、ベトナム戦争は泥沼化し、アメリカ国内では暴動が頻発するという状況でした。そんな状況の中、アポロ8号がもたらした写真とメッセージは、アメリカ国民に大きな感動を与えました。

アポロ8号は、当初の計画では地球の周りの軌道で10日間、月着陸船のテストを行うことになっていました。しかし、ソビエト連邦がアメリカに先んじて有人月着陸を敢行するかも知れないという危機感と、故ケネディ大統領が宣言した「1960年代の終わりまでに人間を月に送り、無事に地球に帰還させる」という国家目標の期限が迫っていたことから、計画を変更して月周回軌道に送り込まれることになりました。かなりの冒険であったことは間違いありません。しかし、このアポロ8号の飛行が成功したことによって、翌年のアポロ11号の月面着陸への地ならしが大きく進んだことは言うまでもありません。

故ケネディ大統領が1961年におこなった有名な宣言は次のとおりです:
I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, before this decade is out, of landing a man on the moon and returning him back safely to the earth.
英語の授業でこの文章を暗唱させられたおかげで、私は"commit"や"decade"という単語を覚えました。

アポロ8号に搭乗していたジェームズ・ラベル飛行士は、のちにアポロ13号の船長として、爆発事故を起こした宇宙船で再び月の周囲をまわって地球に帰ってくることになりました。ジェミニ7号、同12号、アポロ8号に搭乗して宇宙を飛行し、アポロ11号が初めて月着陸を果たした際にはニール・アームストロング船長の交代要員でもあったラベル飛行士は、2度も月を目前にしながら、とうとう最後まで月に足跡を印すことができませんでした。

なお、アポロ8号のもう一人の搭乗員は月着陸船のパイロットであったウィリアム・アンダーズ飛行士です。

Image credit: NASA