第三西須美寿海丘(Daisan-West Sumisu Knoll)は、今も火山活動が続いている明神礁(地図)の西方にあるドーム状の地形です。直径約 7km で海底から 900mほど高くなっています。以下は、この海丘が大陸地殻と同じ花崗岩でできていることを発見した、とする2015年の論文です:
- Pliocene granodioritic knoll with continental crust affinities discovered in the intra-oceanic Izu–Bonin–Mariana Arc: Syntectonic granitic crust formation during back-arc rifting (海洋プレート内の伊豆-小笠原-マリアナ弧で発見された、大陸地殻と類似性を有する鮮新世の花崗閃緑岩からなる海丘: 背弧隆起時の造構同期的な花崗岩地殻の形成)
Highlights を眺めても Abstract を読んでも、岩石学や大陸地殻の形成論について専門的な知識を持たない素人にはよくわかりません。海洋プレート内で大陸地殻がつくられているぞ、ということらしいのですが。そこで、この発見の意義について『海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史』(佐野貴司、講談社 ブルーバックス B-2021、2017)から引用します:
この第三西須美寿海丘の発見は2015年に国際的な科学雑誌に論文として公表され、大陸地殻の研究者らに衝撃を与えました。その理由は、花崗岩が大陸にしか存在しないという固定観念があったからです。太平洋の海底から通常の花崗岩が見つかったという報告は、これまでに考えられてきた大陸地殻の形成モデルを見直すきっかけとなるでしょう。そして、未成熟島弧の背弧側は大陸地殻がつくられている現場である、という重要な事実が判明したのです。
ここで「未成熟島弧」というのは伊豆-小笠原-マリアナ弧を指しています。大陸地殻が成長段階にあるからです。それに対して、日本列島はすでに大陸地殻が厚く成長しているので成熟島弧とよばれます。「背弧」は、島弧を挟んで海溝の反対側の領域を指します。
伊豆-小笠原-マリアナ弧の地下で作られているのは、大陸地殻としてはやや特殊なトーナル岩(カリウム成分が少ない)と考えられていますが、背弧側ではカリウム分に富む通常の花崗岩が作られていると推定されています。
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