5月7日付「ブラジル沖に『大陸」の痕跡』の続報です。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)が5月7日付で出したプレスリリースです:
上記プレスリリースには、いつ、どこで、どういう調査を実施したかという事実関係のみが書かれており、「大陸のような大きな陸地があった痕跡が見つかった」などとは一言も触れられていません。調査の成果については、「本航海に関する研究成果については、論文等にまとまった段階で公表します」とあるのみです。
どうやら、ブラジル側の研究機関と海洋研究開発機構の現地調査チームが、ブラジルでおこなった記者会見がニュースの出所であるようです。現地調査チームの意気揚々とした発表と、国内の海洋研究開発機構の木で鼻を括ったようなプレスリリースとの落差は何に由来するのでしょうか。現地調査チームの勇み足だったのでしょうか:
報道記事を見ていると、「映像を分析したところ、岩は、陸上でしかできない花こう岩だったことが分かった」、「現場の海底では今後、ブラジルの研究機関が、実際に花こう岩を採取して、詳細な分析を行うことを検討している」(NHK)とあり、海底の崖が花崗岩でできていると直接確認されたわけではないことがわかります。また、「ブラジル政府は、『伝説のアトランティス大陸のような陸地が存在した極めて強い証拠』としています」(テレビ朝日)とあり、経済水域の設定などが絡む政治的な思惑も見え隠れします。3月に東京大学地震研究所が大失態を演じた立川断層の誤認問題のときのように、「見たいものが見えてしまった」ということでなければよいのですが:
- 東京大学地震研究所の失態 (13年3月28日)
- 東京大学地震研究所の失態 (続報) (13年3月28日)
関連記事
- プレートの運動は40億年以上前に始まっていた (08年12月22日)
- 縮む環太平洋火山帯 (08年12月28日)
- 地球には内核が2つある !? (09年1月8日)
- 移動する海嶺、広がる南極プレート (09年1月10日)
- 移動する海嶺、広がる南極プレート(補足) (09年1月12日)
- フィリピン海プレートとウナギ (09年1月12日)
- 大西洋海底の地磁気の縞模様 (09年1月17日)
- ショック・ダイナミクス (09年1月21日)
- アンデス山脈は急激に高くなった (09年1月28日)
- 太平洋プレートとダイヤモンド (09年2月1日)
- 古代文明とプレート境界 (09年2月18日)
- 生命進化とプレートテクトニクス (09年2月23日)
- トンガの地震は津波を起こしにくい (09年3月3日)
- 海洋底で見つかった古い化石 (09年3月21日)
- 九州・パラオ海嶺 (09年4月7日)
- ラクイラ地震とプレートテクトニクス (09年4月21日)
- 新しいプレート誕生 (09年4月22日)
- ラクイラ地震とプレートテクトニクス(補足) (09年4月26日)
- プレートの「底」確認 (09年5月1日)
- マントルの粘性 (09年5月5日)
- 地震前後の海底変動を世界で初めて実測 (09年5月16日)
- マントルの流動速度は速い (10年5月20日)
- 「ちきゅう」が沖縄トラフを掘削へ (10年9月2日)
- マントル構成鉱物の超塑性を実験で確認 (10年12月27日)
- トルコ東部の地震とプレート・テクトニクス (11年11月1日)
- 大陸移動説発表から100年 (12年1月26日)
- プレートの沈み込みが加速! 加速! 加速! (12年5月30日)
- 南極大陸にピラミッド !? (12年9月7日)
- ブラジル沖に「大陸」の痕跡 (13年5月7日)
- 受動的拡大説に軍配 ― 中央海嶺の構造 (13年5月7日)