2020年5月17日日曜日

タム山塊 — 定説が覆る


日本の遙か東方の海底にあるシャツキー海台。そこからそびえるタム山塊地図)は、当初は、小規模な火山が集まってできた盾状の海底火山と考えられていました。

その後は、単一の巨大な火山とする説が流布していましたが、このほど、アメリカの科学誌『Scientific American』May 2020号に掲載されたヒューストン大学のウィリアム・セーガー博士の論文によって、この考えが覆されました。

長年、タム山塊を研究しているセーガー博士は、この山塊の命名者であり、「単一の巨大な火山」説の提唱者でもあります。つまり、今回の論文で自説を否定したわけです。(タム山塊の名は同氏がかつて所属していたテキサスA&M大学(Texas A&M University)の頭文字に由来しています。)

以下は、タム山塊の形成についての説の変遷です:

▼ 2013年「盾状の海底火山、タム山塊は、小規模な火山が集まってできたと考えられていたが・・・」、「中心からあらゆる方向に溶岩が流出した痕跡が見られるが、火山活動の二次的な発生源は見当たらない」、「タム山塊は単一の巨大な火山で、その規模はこれまで太陽系内で最大と考えられてきた火星のオリンポス山に匹敵する」:

▼ 2019年「タム山塊は単一の火山ではなく、海の地殻が次々に折り重なってできた巨大な地形であるという。現在のところはっきりとした説明はつかないが、単一の火山よりももっと奇妙な何かであるようだ」:

▼ 2020年「New magnetic data from the Pacific Ocean seafloor show that the enormous Tamu Massif volcano was not formed the way experts thought.  Rather than erupting like a volcanic mountain, Tamu Massif was created by lava oozing up between separating tectonic plates.(太平洋の海底から得られた新たな残留磁気のデータは、巨大なタム山塊火山が専門家たちが考えてきたような過程で形成されたのではないことを示している。タム山塊は、火山のような噴火ではなく、開いていくテクトニック・プレートの間に溶岩が押し出されることによって形成された)」:



地質学者や地球物理学者のツイートを見ていると、以前から多くの研究者が、海台などの海洋底の高まりは噴火ではなくプレートが開くことによって形成されると考えていたようです。