先月末ごろから、三重県の熊野市、尾鷲市、紀北町など、熊野灘(地図)に面した地域で、カツオの水揚げが増えています。カツオは沖合での一本釣りなどで漁獲されるのが普通ですが、沿岸部に設けた定置網にも入っているとのこと。「定置網漁で数週間もカツオが取れ続けるのはかなり珍しい現象だ」(三重県水産研究所):
原因としては、「黒潮からの暖水が沿岸部に流れ込んでいることなどの影響」と考えられています。
カツオについては、大正関東地震(関東大震災)の前に見られた現象として次のような記録があります。『地震前兆現象 予知のためのデータ・ベース』(力武常次、東京大学出版会、1986)からの引用です:
- 東京湾沖の島付近、震央距離53km、地震の3~4時間前 ― カツオがとても多く群集していて漁船が十隻あまりで盛んに釣っていた。こんなに岸近くまでカツオが来たことは今迄なかった。
- 館山湾内(沖の島付近)、震央距離53km、地震の2時間前、報告者・武者金吉 ― 大正十二年九月一日関東大地震の直前に、千葉県館山湾内沖の島付近でカツオが非常に沢山釣れた。
- 相模湾神奈川沿岸、震央距離15~25km、報告者・武者金吉 ― この年は一般に漁業がよくなく、神奈川の沿岸で最も盛んなブリの大謀網漁業も、この年はとても不振。また、例年相模湾に回遊してくるカツオ・マグロがこの年はついに一度もこなかった。
大正関東地震の震源域である相模湾からカツオが逃げ出していたのでしょうか。
カツオではありませんが次のような記録もあります:
- 瀬戸内海、震央距離500km、地震の数時間前、報告者・今村明恒 ― 瀬戸内海でまぐろが多く漁獲されたことがあった。この温水魚は黒潮から離れる例がほとんどないのに、それが遠く離れてしまった。(中略) 当時最も首肯される説として認められたのは彼等が関東地震に恐怖し度を失って遠く彼方まで逃げ込んだのであろうとのことであった。
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