2月12日付「冥王星の衛星に名前をつけよう!」の続報です。
米国のSETI研究所が募集していた《冥王星の衛星に名前をつけよう!》が締め切られました。45万を越える応募があり、1位はVulcan(バルカン)、2位はCerberus(ケルベロス)でした。以下のページに集計結果のグラフがあります:
1位になったバルカンは、ローマ神話に登場する火と鍛冶の神です。火山を意味する英語の〝volcano〟はこの神の名前に由来しています。冥王星の5つの衛星のうち、すでに名前がつけられているのは、カロン(Charon:冥府の川の渡し守、死者の魂を舟に載せて川を渡り、黄泉の世界に運んだ)、ニクス(Nix:夜の女神ニュクス)、ヒドラ(Hydra:地下を守る怪物ヒュドラ)の3つです。いずれも、冥界の王・プルートーの周囲を回る衛星にふさわしい名前です。それらに比べるとバルカンは異質で、他の衛星名との整合性がありません。冥王星の衛星の名前としてはふさわしくないと思います。
そもそも、SETI研究所が募集の当初に掲げた名前候補のリストに、バルカンは載っていませんでした。それにもかかわらず、バルカンが最多の票を集めたのは、テレビや映画の「スタートレック」シリーズに根強いファンがいるということなのでしょう。組織票があったのかも知れません。ご存じない方のために申し添えると、レナード・ニモイが演じる〝ミスター・スポック〟の故郷がバルカン星という設定です。
2位になったケルベロスは、ギリシャ神話に登場する冥界の番犬で、3つの頭を持つとされています。こちらは、冥王星の衛星の名前としてふさわしいと思います。
個人的には、冥府くだりの物語があるOrpheus(オルフェウス)やMelinoe(悪夢や狂気をもたらす妖精で、オルフェウスにまつわる神話に登場)なども良いと思うのですが、票が伸びませんでした。
今後、SETI研究所が最終的な選考をおこなったのち、国際天文学連合(IAU)に提案して承認を得るという手続きが踏まれます。最終的な決定までに1~2ヵ月かかるとのことです。この過程のどこかで、バルカンは冥王星の衛星名としてはふさわしくないとして没になるかも知れません。
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