アメリカ地質学会の論文誌『GEOLOGY』1月号に、オーストラリアを中心とした研究チームによる以下の論文が掲載されています。この論文によると、現在、南アフリカなどで産出されるダイヤモンドは、ゴンドワナ超大陸南部に沈み込んでいたプロト太平洋プレート(古太平洋プレート)の先端が、下部マントルまで到達した結果生成されたものであるとのことです:
- Deep mantle diamonds from South Australia: A record of Pacific subduction at the Gondwanan margin (南オーストラリア産出の深部マントルに由来するダイヤモンド: ゴンドワナ大陸の縁に沈み込んでいた太平洋プレートの記録)
論文の要旨をさらに簡略にまとめると次のようになります:
南オーストラリアの Eurelia で産出するジュラ紀のキンバーライトから得られるダイヤモンドは、ともに産出する鉱物によって 670km よりも深い下部マントルが起源であると証明される。Eurelia 産のダイヤモンドを構成する炭素にはいくつかの源があるが、その一つがプレートとともに沈み込んだ炭酸塩であることが、同位体の構成比率からわかる。沈み込み帯に面するゴンドワナ超大陸の縁にキンバーライトの産出地が並んでいることと、リソスフィアよりも深いところで形成されたダイヤモンドに含まれる地殻の痕跡の存在は、下部マントルまで沈み込んだプロト太平洋プレートの残滓がダイヤモンドの究極の起源であることを証明している。ゴンドワナ超大陸南部におけるキンバーライトにともなう火成活動と、ジュラ紀から白亜紀前期にかけての広範囲の火成岩分布は、ともにこの沈み込みプロセスに起因するものである。
当時のゴンドワナ超大陸南部とプロト太平洋プレートの沈み込み帯を描いた図が以下にあります。Eurelia の位置も印されています。南アメリカ、アフリカ、南極、オーストラリアの各大陸にあるダイヤモンド産出地が、当時のプロト太平洋プレートの沈み込み帯の陸側に位置していたことがわかります:
キンバーライトについては、『世界大百科事典』(平凡社)に次のように説明されています:
kimberlite 揮発成分とカリウムに富む不等粒組織の超塩基性火山岩であって、斑晶は主として地下深部で結晶したカンラン石、そのほか少量の金雲母,輝石,ザクロ石やチタン鉄鉱を含む。石基はカンラン石、輝石、金雲母、スピネル、方解石などから成る。一般に著しい蛇紋石化作用を受けている。ダイヤモンドの唯一の源岩(含有量は1000万分の1以下)であって、安定大陸地域にのみ、まれに小さな貫入岩体として産出する。マグマのうちでは最も深いところ(150~250km)で生成され、上部マントルと地殻を通過する時速は 30~60km と見積もられている。爆発的に上昇する時、地球深部を構成しているカンラン岩やエクロジャイトを取り込んでくることがある。ダイヤモンドを含む斑晶鉱物やこれらの捕獲岩類は、地球内部のことを直接知る手がかりとなっている。
上の説明では「爆発的に上昇する」と書かれていますが、キンバーライトのもととなるマグマが、マントルから地表までごく短時間のうちに上昇してきたことはたしかです。そうでないと、中に含まれるダイヤモンドが結晶状態を保てないからです。上昇速度や上昇の原動力については諸説あるようです。下記のサイトでは、上昇速度を時速 300km 以上としています。また、上昇の原動力については、マグマに含まれる大量の水分をあげています:
ゴンドワナ大陸について、同じく『世界大百科事典』(平凡社)から引用します:
Gondwanaland 約3億年前の古生代後期から約1億年前の中生代半ばころまで、南半球を中心に存在したと推定される超大陸をいう。この大陸はその後分離移動して現在のアフリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸、マダガスカル、インドなどを形成したものとほぼ確定的に考えられている。ゴンドワナ大陸の北側には、テチス海(古地中海)をへだててローラシア大陸 Laurasia があった。古生代前半や先カンブリア時代にゴンドワナ大陸とローラシア大陸とは一連の陸地を形成していたと推定されており、この超大陸をパンゲアと呼んでいる。ゴンドワナ大陸の名前は、インドの中央部東寄りの地域に昔ゴンド族がつくっていた王国に由来する。(以下略)Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency