70年、杉村さんは地球物理学者の上田誠也さんとともに、プレートテクトニクス説とは独立に、地質と地球物理学を融合し、沈み込み帯にある日本で地震や火山活動が起こると論じた「弧状列島」を発表した。
だが、杉村さんたちの「新しい地球観」は、伝統的な東大地質学教室の主流にはならず、東大では 26年間 、助手のままだった。
この先生の名前、記憶の片隅にあったので、あたためて書斎の本棚を見渡すとありました。『クローバルテクトニクス 地球変動学』(杉村新 著、東京大学出版会、1987年)。プレート・テクトニクスについての専門書ですが、数日間で読み通した記憶があります。
特に印象に残っているのは「アフリカを中心とした地球表面全体の投影」という図です。ほとんどの大陸が太平洋プレートに囲まれているように見えます。図には次のようなキャプションがついています —— 「アフリカプレートや南極プレートは、ほとんど拡がる境界にかこまれている。拡がる境界にかこまれたプレートはどうなるだろうか、本文を読んでください。」
そして本文には次のように書かれています —— 「(アフリカプレートや南極プレートは)一部を除きほとんど拡大軸で囲まれている。もし拡大軸が動かないとすると、アフリカも南極もどんどん隆起でもしないと説明がつかないが、そういうことは決してない。これらの拡大軸の位置は、外へ外へと動いてゆき、アフリカプレートも南極プレートも、面積を拡げつつあるのである。このことが理解できないと、プレートの概念のポイントを把握したことにならない。」
さらに、拡大軸(海嶺)自体が海溝から沈み込んで消滅してしまうことがあることや、プレートが剛体でということの意味についても、詳しく解説されています。