米国・ハワイ島にあるマウナ・ロア山(地図)は地球最大の活火山です。同じ島にあるキラウエア山は活発で現在も噴火中であるのに対して、マウナ・ロア山は 1984年に噴火して以来、37年間にわたって比較的静穏な状態が続いています。1984年の噴火では、北東地溝帯から流れ出た溶岩がヒロ市(地図)から 7km 以内にまで迫りました。地質学的な記録によると、マウナ・ロア山は平均して 7年ごとに噴火していますが、最近は西側の山腹で群発地震が発生するなど、変化の兆しが現れています。
以下の記事は、米国地質調査所(USGS)のハワイ火山観測所(HVO)が 5月6日付で出したマウナ・ロア山の最近の動きを記した文書です:
- Volcano Watch — Tiny changes at Mauna Loa’s summit hold big clues (マウナ・ロア山頂の小さな変化が大きな手がかりとなる)
主要部分を抜粋、テキトー訳してみました:
マウナ・ロア山で最近起きている地殻変動や地震活動の変化は、2004年に始まったとされる一連の活動の最新のものである。当時、全地球測位システム(GPS)の観測装置は、震源が非常に深い地震を伴って山頂直下のマグマ溜まりが膨張していることを示していた。この現象は数ヶ月続いた後、マウナ・ロア山は通常の活動状態にもどった。2014年に再び山頂の膨張が始まり、今度は浅い地震を伴っていた。それ以来、2018年に短い休止期間があっただけで、この傾向はずっと続いている。
過去 6ヶ月間、マウナ・ロア山の西麓での地震活動が活発化し、山頂の地殻変動パターンに変化が見られた。 これらの変化は小さなもので、時にはノイズ・レベルをかろうじて上回る程度だが、マグマ・システムに重大な変化が生じていることを示しているのかも知れない。
ここ数ヶ月間に得られた 3つの観測事実が特に興味深い(地球物理学者にとっては)。
1つ目は、2020年10月以降、マウナ・ロア山頂の地殻変動の方向が 2回逆転し、外向き(膨張)と内向き(収縮)を繰り返していること。 最近の収縮時には、マウナ・ロア山頂のカルデラ(Mokuʻāweoweo)の直径が約 1.5cm 短くなった。これは、これまでの膨張量に比べれば小さいが、このような突然の反転は、現代の観測機器によるマウナ・ロア山の観測ではこれまで見られなかった新しい現象である。
2つ目の観測は、3月6日に Mokuʻāweoweo で発生したマグニチュード 3.2 の小規模で浅い地震。衛星からのレーダー観測によって、この地震によってカルデラの一部が 10cm 近く沈下したことが確かめられた。 これはマグニチュード 3.2 の地震としては非常に珍しく、断層の滑りが地表まで達した可能性があることを示している。
3つ目の観測結果は、最も小さいものだが、最も意味のあるものかもしれない。 3月23日から、マウナ・ロア山頂付近の傾斜計で、約 5マイクロラジアンの傾きの変化が観測された。キアラウエアでこの程度の傾斜変動が見られることは珍しくないが、マウナ・ロア火山系の変化に起因する可能性のある傾斜信号はこれまで観測されたことがなかった。マウナ・ロア山では、昼夜や季節による気温の変化や降雨による傾斜の変化は観測されていたが、火山の地殻変動によるものは観測されたことがなかった。
現在、マウナ・ロア山は噴火しておらず、噴火警戒レベルは ADVISORY[4段階中の下から2番目]。この警戒レベルは、噴火が差し迫っていることを意味するものではなく、また、現在の不安定なレベルから噴火への進行が確実であることを意味するものでもない。
先週、マウナ・ロア山の地下で約118回のマグニチュードの小さい地震が記録されたが、そのほとんどは山頂や上層部の地下 8km 未満で発生している。
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