2009年11月5日木曜日

月の誕生とフィリピン海プレート

地球の衛星・月がどのようにして形作られたのかについては諸説ありますが、現在有力なのはジャイアント・インパクト説です。

それに対して Peter Coleman という人物が新説(explosive fission theory; 爆発分離説)を唱えています ―― 月は、マントル深部でおきた爆発によって地球から飛び出した。フィリピン海プレートは月が飛び出した後に残った巨大な穴だった。この説によれば、これまで説明できなかったテクタイトの分布を説明できる ―― というものです:
非常に長い記事で、多くの証拠をあげています。すべてを紹介することはできませんので、以下に一部だけつまみ食いします:
月は、弾性体でできた大砲の弾丸のように、回転しながら地球から飛び出した。飛び出した場所は、現在、フィリピン海プレートで覆われている。回転の軸は、フィリピン海プレートの南北方向の直径と一致していた。

フィリピン海プレートの北端と南端には三重会合点(3本のプレート境界が交わるところ)があり、その 2点間の距離は、月の直径 4376km と驚くほど近い。このプレートは完全に沈み込み帯に囲まれており、その起源は謎に包まれている。このプレートを、標準的なプレートテクトニクスの枠組みにむりやり当てはめようとする試みが続けられてきた。研究者の中には、このプレートは現在の位置に回転することによってはまり込んだと考える向きもある。 (注: 月の直径は、天文年鑑によれば、4376km ではなく 3476km です。フィリピン海プレートの北端と南端の間の距離は約 3600km です。)

Coleman は、フィリピン海プレートはかつて、月が飛び出した後に残された巨大な穴だった、と推測している。月が飛び出した後の穴は、ジクジクと膿がしみ出す傷口のようなもので、莫大な量の玄武岩質マグマが湧きだした。このことによって、約 2億年前に北西太平洋のこの場所で太平洋が誕生したという科学者たちの考えを説明できる。

月を飛び出させた爆発が、同時にプレート・システムと沈み込みの起こる海溝を作り出したとしたらどうだろうか。プレート・テクトニクス理論は、日に日に疑わしさが増している。この理論において定説となっている沈み込みの概念に反することになるが、月が飛び出したという仮説によれば次のように考えられる: すなわち、月を飛び出させた全地球的爆発によって生じたリソスフェアのひび割れは、海洋性のスラブによって充填される。これの意味するところは、ウィルソン・サイクルとよばれるような過程で、海洋性のスラブが連続的に大陸の下に沈み込んでいく必要はないということである。もし、海洋底のリサイクルがなかったとしたら、現在海底に横たわっているのは、原初の海洋底ということになる。よって、この論理は、北西太平洋における最古の海底がわずか 2億年前のものであるという事実と密接に関連している。

月の創成の原因となった爆発は、ヒマラヤやチベット高原の大規模な隆起、インドとユーラシアの衝突なども引きおこした。この仮説はさらに多くの地形 ―― インドを中心とする世界最大の負のジオイド異常、インド由来の玄武岩が西フィリピン・プレートに存在すること、背弧海盆の存在、東南アジアの地形など ―― の成因を説明できる可能性がある。もし、フィリピン海プレート方向へ向かう爆発の力が弱かったならば、月を軌道まで飛び出させることはなく、かわりに小さな大陸が形成されていたであろう。

月が地球深部から飛び出したのだとしたら、その痕には深い穴が残る。その穴はマグマによって埋められることになるが、マグマが冷えて固まるので、完全に埋め尽くされることはなく傷跡(フィリピン海プレート)として残る。現在でも、その傷跡の近くではプレートの移動が速く、かつての深い凹み向かって滑っていく傾向がある。

この仮説は、地震予知理論にヒントを与える。また、地震の専門家は否定するが、離れた場所で起こる地震の間に関係があるように見えることの理由も説明できる。
このほかにも、飛び出した月が、なぜ地球の潮汐力によってばらばらに破壊されなかったのかについての説明、(アポロ計画で持ち帰られた岩石によって判明した)月の高地の地質や環太平洋火山帯の存在もこの説ではうまく説明できるとしています。

抜粋ではわかりにくいとと思われる方は、ぜひ原文にチャレンジしてください。

この説がトンデモであることは、月やフィリピン海プレートの年齢を考えれば、すぐにわかります。この説を唱えている本人もこの点には気づいているようで、長~い文章の最後の段落で「One major hurdle(大きなハードル)」であると認めています。そして、このハードルを克服するには、今のところ、(月を飛び出させた)地球規模の爆発が、(放射性同位元素の比率などによって計測される)地質学的な時計をリセットしたと考えるしかない、と吐露しています。

上記の記事は、メディアの記者が取材したものではなく、Coleman という人物が自分で執筆し投稿したものです。Coleman とはどういう人物なのか、どうもよくわかりません。ニュージーランド在住の研究者とのことですが、サイエンス・ライターのようでもあります。以下のページは同じ人物の研究を紹介しています(ありがちな名前なので同姓同名の可能性もありますが):