2009年11月4日水曜日

テスラ・ロードスター

10月25日に放映された NHK スペシャル『自動車革命 第2回スモール・ハンドレッド 新たな挑戦者たち』に衝撃を受けた方は多いと思います。電気自動車など、エコロジーを重視した自動車の開発で、日本は世界の先頭を走っていると多くの日本人は信じているのに、実は、すでに中国やアメリカの後塵を拝するようになりつつあることが、あからさまになっていました。中国の電気自動車に試乗したトヨタ自動車の幹部が、その予想外の完成度の高さに愕然とする様子も印象的でした。中国やアメリカでの電気自動車分野へ新規参入や起業、投資意欲のすさまじさには圧倒されるばかりです。ひるがえって日本はと考えると、「沈滞」という言葉しか出てきません。

このような番組は、自動車メーカーから広告料を受けとっていない公共放送 NHK だからこそ製作・放送できるのではないでしょうか。われわれが支払っている受信料に見合う内容だったと思います。

ずいぶん昔、私は直接視聴したわけではないのですが、やはり NHK で、日本メーカーが国内で販売している自動車の安全性が、同じ車種の輸出仕様のものとくらべて数段劣っているという内容のスペシャル番組がありました。国内向けの自動車の安全装備を手抜きした差額で、輸出仕様車のコスト高を吸収するという面もあったようです。その放送がきっかけになって、世論が高まり、規制当局やメーカーの対応も変化して、国内で販売される自動車の安全性が格段に高まったそうです。これも、NHK という公共放送 の有用性を示した番組だと思います。受信料の支払いを拒んでいる人たちの中にも、この番組があったおかげで運転中に命拾いをした人がたくさんいるのではないでしょうか。

同じ 25日にオーストラリアで始まったソーラーカー・レースでは、日本の東海大学が 2位以下を大きく引き離して優勝しています:
このレースは、オーストラリア北部ダーウィンから南部のアデレードまで、オーストラリア大陸を約 3000キロにわたって縦断するもので、世界最大級で世界一過酷といわれます。東海大学の優勝は喜ばしいことですが、このソーラーカーの技術が、将来市販されるであろう自動車の開発にそれほど役立つとは思えません。

上記のレースは、これまでは「ワールド・ソーラー・チャレンジ」という名称でした。今年から、「グローバル・グリーン・チャレンジ」と改称され、ソーラーカーだけでなく、ハイブリッド、電気、低排出、代替燃料の分野の車も参加するようになりました。早速参加したテスラ・モーターズ社の電気自動車「テスラ・ロードスター」が、無充電で 501km を走行するという記録を樹立しています。これまでの記録は 387km だったとのことです:
テスラ・ロードスターは、上記の NHK の番組にも登場して、颯爽とアメリカの道路を走っていました。いわゆるエコ・フレンドリーな車というと、どことなく無骨というか野暮ったいデザインのものが多いように感じます。しかし、テスラ・モーターズの電気自動車は、皆、スーパー・カーを彷彿とさせる流麗な姿をしています。写真で見る限りでは、記録を樹立した車も、レース用ではなく市販車と同じ車体のようです。価格は高級外国車なみとのことですが、アメリカにはこういう車を積極的に購入する気風と資力を持った富豪がたくさんいて、それがこういう新しい技術の進展を支えて好循環をもたらしているのだと思います。