2022年11月3日木曜日

火山噴火と伝承

 
11月は Native American Heritage Month(アメリカ先住民族伝統月間)ということで、USGS もそれにちなんだツイートをしています —— 7700年前のマザマ山噴火(地図)。
 
「伝承されてきた知識は、地質学的なプロセスとその影響についての洞察を与えてくれる。(アメリカ先住民の)クラマス族は、『地下世界の酋長』が激しく怒り、雷鳴をとどろかせ、彼の山の頂に立ち、炎の海で森を焼き尽くしたと語り伝えている。7700年前のマザマ噴火。」
 
 
7700年前のできごとが現代まで伝承されるものでしょうか。日本では、『古事記』に書かれている天照大神の岩戸隠れは、7300年前に起きた鬼界カルデラ大噴火によって火山灰が空を覆い、太陽の光が地上に届かなくなったことを反映しているとの説があるようです。
 
また、物理学者・寺田寅彦は素戔嗚尊(スサノオノミコト)が火山の象徴だとの説を唱えていたそうです。以下、孫引きになりますが、『火山で読み解く古事記の謎』(蒲池明弘、文春新書、2017)から寺田寅彦の『神話と地球物理学』の一部を引用します ——
 
なかんずく速須佐之男命に関する記事の中には火山現象を如実に連想させるものがはなはだ多い。たとえば「その泣きたもうさまは、青山を枯山なす泣き枯らし、河海はことごとに泣き乾しき」というのは、何より適切に噴火のために草木が枯死し河海が降灰のために埋められることを連想させる。噴火を地神の慟哭と見るのは適切な比喩であると言わなければなるまい。「すなわち天にまい上がります時に、山川ことごとに動み、国土皆震りき」とあるのも、普通の地震よりもむしろ特に火山性地震を思わせる。[中略]「すなわち高天原皆暗く、葦原中国ことごとく闇し」というのも、噴煙降灰による天地晦冥の状を思わせる。