2018年6月12日火曜日

「環太平洋火山帯」という言葉にご用心


6月13日、テキトー訳部分を追加しました。この文と同色にしてあります。

サン』や『デーリー・スター』、『デーリー・エクスプレス』といったイギリスの大衆紙は、火山噴火や地震について、しばしばセンセーショナルな憶測記事や科学的根拠のないデタラメ記事を掲載します。購読者層の教育・教養のレベルが低いので、それでかまわない、売れるからいい、と思っているのでしょう。ハワイ島のキラウエア山やグアテマラのフエゴ山の噴火が大きな被害を出して世間の耳目を集めている昨今、その傾向はますますヒートアップしています。

当然、そのような記事を苦々しく思っている専門家は多いわけで、ツイッターやブログなどで批判や反論をしています(海外ではよく見かけるのですが、日本の専門家は、雑誌などのトンデモ記事に対して「沈黙は金」とばかりに黙殺することがほとんどです)。

火山学者のツイートから ―― 「環太平洋火山帯とグアテマラのフエゴ山について何か言っている記事を見かけたら、すぐにゴミ箱に放り込んで。不安をあおって販売部数や売り上げを増やそうとするゴミくずですから。(そんな記事を読んで)時間を無駄にしないで。記事を書いた人たちは、この地域のことについて何もわかっていません」:

もう一つ、同じ火山学者がツイート ―― 「皆さん、環太平洋火山帯について疑問があったらこれを読むといいですよ」と別の火山学者のブログ記事を紹介:

で、紹介されたブログ記事「No, the “Ring of Fire” is Not a Real Thing」にはどんなことが書かれているのでしょうか。全部を翻訳している余裕がないので、主要な部分を抜粋・テキトー訳してみました:
たしかに、太平洋の縁に沿ってたくさんの地質構造上の境界が存在しています。太平洋は、複数の海洋プレートを敷き詰めた巨大な海洋です。それらの海洋プレートは、多くの大陸や他の海洋プレートと相互に影響し合っています。しかし、チリの出来事がカリフォルニアや日本やニュージーランドの出来事を実際に変化させるわけではありません。テクトニクスはそのようには作用しないのです。テクトニクスのスケールは非常に大きいのです。ですから、フィリピンにあるマヨン山が噴火したからといって、それが日本の草津で噴火を引き起こしたり、アラスカの地震のきっかけになることはありません。それらの事象は直接関連し合っているわけではないのです(同一のプレート内であってもです!)。

現在、私たちが目の当たりにしている「環太平洋火山帯がどんどん活発化している」という類いのニュース記事の盛り上がりは地質学的な現象ではなく、むしろ人間の性質が関係しているのです ―― ある出来事が注目を集める、するとこれまであまり報道されていなかった事柄(複数)が突然報道されるようになる、なぜならそれらは私たちの心の中で関連づけられるから。そしてブームが起き、「環太平洋火山帯がすごいことになりそうだ」となってしまいます。

地質学的なプロセスはいつもと変わらず進行しています。今、私たちは火山噴火や地震などの出来事の集中的発生を目撃しているのかも知れないし、そうではないかも知れません(実際の統計を見る必要があります。わかりますね、データです)。先週、私たちはまだ環太平洋火山帯のことでパニックに陥っていませんでした。その時から地球には何の変化も起きていないのです。

とにかく、「環太平洋火山帯」は私がほんとうに嫌いな言葉です。なぜなら、火山噴火や地震がなぜ起こるのかをよく理解する上でまったく役に立たないからです。地球上には、環太平洋火山帯以外にも多数の火山があります。地震も、いたる所で発生しています。「環太平洋火山帯」という言葉は、ある地域で起きる地震や火山活動の地質学的背景を調べたり理解したりしたくない、面倒はいやだ、というときに使われる言い訳に過ぎないのです。

火山噴火や地震には、地域によってそれぞれ異なる地質学的な背景があるのに、「環太平洋火山帯(Ring of Fire)」というマジックワードで一括りにしてわかった気にさせてしまうのはよろしくない、本当の理解を妨げる、ということです。


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