NASA が 300億円近い巨費と 9年の歳月を費やして開発した Orbiting Carbon Observatory 衛星(OCO、軌道炭素観測所)が 2月24日に打ち上げられました。しかし、衛星本体を保護するためのフェアリングの分離に失敗、衛星は軌道にのることなくロケットとともに南氷洋に落下してしまいました:
上で「9年の歳月」と書きましたが、これの意味するところは、OCO の計画がブッシュ政権の発足前に始まり、同政権の終焉後すぐに打ち上げに至ったということです。ブッシュ政権下では、OCO 計画に対して予算削減等さまざまな「ブレーキ」があったようです。長い間の艱難辛苦を乗り越えて打ち上げただけに、その失敗の衝撃は大きいものがあるようです。
OCO は、これまでにない高い精度で、二酸化炭素の発生場所と吸収場所や時間的変動を観測する能力を持っていたため、気候変動を研究する科学者の間に大きな失望が広がっています。以下は、『ニューヨーク・タイムズ』の記事ですが、科学者たちの失望・困惑や、OCO 衛星に準じる観測能力を持つ日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」(今年 1月 23日に打ち上げ成功)に対する関心と期待が高まっていることを伝えています:
OCO 衛星は二酸化炭素の発生源をピンポイントで特定できる能力を持っていたため、その打ち上げ失敗で胸をなで下ろす利害関係者や国家があっても不思議ではありません。何らかの妨害工作があったのではという疑念を持つ人も出ています。所詮は憶測にもとづく「陰謀論」にすぎませんが、以下はその例です:
この記事によれば、気候変動に関連した観測をおこなう衛星では、打ち上げ失敗や、軌道にのった後に不可解な機能停止に陥るものが多いと指摘しています。そして、これまでの経緯を考慮すると、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」もいつまで観測を続けられるか心配するべきだと書いています。
かつて、チャーリー・シーン主演で『アライバル』というタイトルの SF 映画がありました。エイリアンが秘密裏に地球に工場をつくって大量の二酸化炭素を空気中に放出し、地球を彼らの住みやすい環境に改造しようとするストーリーでした。そのようなエイリアンにとっては、OCO 衛星などの地球観測衛星は非常にじゃまな存在ということになります。また、遠い星から地球にやってくる技術を持っている彼らにとって、人類の打ち上げた衛星を機能停止させることなどは朝飯前でしょう …… と、これは日曜の朝の妄想でした。
Image Credit: NASA