ハワイ諸島の島々と火山は、マントルから上昇してきたホットスポットの上を太平洋プレートが移動していくことによって順次形成された、と説明されています。しかし、謎が残っていました。オアフ島より西では火山は1系列しかないのに、モロカイ島より東では北寄りのケア・トラックと南寄りのロア・トラックの2系列に分かれており、噴出する溶岩の化学成分も両者で異なっている点です(説明図)。この点を説明する仮説がオーストラリアの研究者によって提示されました:
- Scientists discover how world's biggest volcanoes formed
- Why Two Volcanoes in Hawaii Are So Close, but So Different
仮説は、今から約300万年前、オアフ島からモロカイ島の位置に火山活動が移るまでの間に、太平洋プレートの移動方向が変化したことが、2系列の火山が生じた原因であると説明しています。言葉で説明すると長くなりますので、以下の図と動画をご覧ください。動画では画面左下の2つの矢印(プレートの移動方向とマントル・プリュームの向き)にも注目してください:
- This diagram shows the tilted Hawaiian plume, the overlying Pacific plate and the distinct volcanism associated with Mauna Kea and Mauna Loa.
- Solving a 168-year old volcano mystery (YouTube動画)
ホットスポット上の火山が2つの系列に分かれる現象は、太平洋の別の地域(サモアなど複数)でも300万年前に生じており、太平洋プレートの移動方向が変化したことを示しているとのことです。また、マントル・プリュームの向きは次第にプレートの移動方向に一致するようになるので、2つの火山系列は将来再び1つに集束すると研究チームは述べています。
余談です。ハワイ諸島からおおよそ北西に向かってハワイ-天皇海山列が延びていますが、ハワイ海山列から天皇海山列に移行するあたりで海山の列が約60度の角度で曲がっています。これまで、この屈曲は約4000万年前に太平洋プレートの移動方向が変わったためと説明されてきましたが、Wikipedia には次のような記述があります:
ホットスポットは移動するものであるとの研究が出てきており、従来考えられていた、プレートの移動向きの変更説は、見直しが進められている。
この屈曲はプレートの移動方向の比較的急激な変化だと長い間考えられていたが、2003年の調査ではホットスポット自体の移動が屈曲の原因であったことが示唆された。この学説については現在議論が行われている。
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