2009年4月5日日曜日

銀山とゴキブリ

3月21日付の記事「海洋底で見つかった古い化石」で触れた『地球 46 億年全史』(リチャード・フォーティ、草思社、2009年)という書物に、ゴキブリについておもしろい記述があったので紹介します。

ゴキブリの話は、チェコ共和国北西部にあるヤーヒモフという鉱山町について述べている節にあります。銀山の坑道で落盤が発生する前にゴキブリが姿を現すので、鉱夫たちが災難を避けることができるのだそうです:
ヤーヒモフで豊かな銀鉱が発見されたのは 1516年のことで、数年後には 800 もの銀鉱山が開かれていた。(中略)銀の鉱脈は、その土地のもろくなった線に沿って広がっており、しばしば断層沿いに走っている。(中略)欲にかられた人間が地下世界へ這うように進んでいく所では、その眠りを乱された地殻が、人間たちの無礼な所業を帳消しにしようと押しつぶすことも珍しくなかった。これに関連して、世界で唯一、ヨーロッパ中央部のこの地域では、ゴキブリが好意的に見られているそうだ。ゴキブリは、岩石のなかの圧力の変化にとりわけ敏感なのだ。ハワイでマグマ溜まりの活動を検知するのに使う圧力計のようなものか。落石の前兆を察知すると、隠れていた場所から姿をあらわし、導管や通路からいちはやく逃げだす。カナリアが炭鉱の友であるように、ゴキブリは銀鉱の友とされ、叩き潰すと悪運に見舞われるといわれていた。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency