2009年4月12日日曜日

地殻は予想以上に融けやすい

地殻を構成する岩石は、これまで科学者が想定していた以上に融けやすい、という内容の論文がイギリスの科学誌『Nature』に掲載されています。以下は、『Nature』のサイトにある要旨です:
この要旨を読んでもよくわかりません。しかし、この研究に資金を提供していた国立科学財団(NSF、全米科学財団)のサイトに、研究内容をかみ砕いた紹介記事があります:
こちらだと、何とか理解することができます。以下は、上記紹介記事の抜粋です:
地球の地殻は、これまで考えられていたよりも簡単に融けることを科学者が発見した。

地殻を構成する岩石が熱を伝える度合いは、温度が上昇するにしたがって低下する。温度が上昇すると伝導率が低下し、岩石は断熱材のようにふるまうようになる。

この発見は、マグマがいかに形成されるか、大陸どうしの衝突や造山帯が形成されるときにどのようなことがおきるのか、についての理解を促進する。

(研究資金を提供した)国立科学財団・地球科学部門のプログラム・ディレクターである Sonia Esperanca 氏は、「今回の研究成果は、地殻内でどの程度の大きさの花崗岩質マグマが形成されうるかという疑問を解くための重要な糸口となる」と語る。

研究チームの一人でミズーリ大学の Alan Whittington 氏は次のように語る。「今日のヒマラヤ山脈や太古のサウス・ダコタ州ブラック・ヒルズのような造山帯の内部で、加熱された岩石に何が起こるのかを、今回の成果を織り込んだコンピューター・モデルで検討した。すると、造山活動にともなう岩石の変形歪みによって生じる熱によって、地殻の溶融が容易におこることがわかった。」

高温の岩石やマグマの熱拡散性は、これまで想定されていた値の半分であった。

同じく研究チームの一員でミズーリ大学の地質学者 Peter Nabelek 氏は次のように語る。「地殻の溶融のほとんどは、マントルから上昇してきた玄武岩質のマグマの貫入によっておこる。問題は、大陸が衝突するさいには、玄武岩質マグマの大陸地殻への貫入が見られない点である。今回の実験は、熱拡散率の低下によって、岩石の変形歪みによる加熱がより早くより効率的におきることを示している。岩石は、ひとたび加熱されれば長い時間高温のままでいる。」
今ひとつわかりにくいかも知れませんが、手短に言うと、地殻内では、上部マントルからの玄武岩質マグマの貫入がなくても、造山運動などにともなう地殻の変形によって生じる熱だけで、岩石の溶融が生じうることがわかった、ということではないかと思います。