中国・東晋の政治家にして文人の干宝(西暦336年没)が、怪異な出来事や事物について編纂した『捜神記』に「城門の血」という話が載っています。以下は、『捜神記』(竹田晃訳、平凡社ライブラリー 322、2000)を参考にしています。また、歌詞と会話の部分は同書からの引用です。
時は秦の始皇帝の時代、所は現在の浙江省にあった長水県で、次のような童歌(わらべうた)が流行りました ――
お城のご門が血によごれ、
お城は沈んで湖になるぞ
ある老婆がこの歌を気にして、毎朝、城門を見に行きます。門番の兵士が(敵国の偵察とでも思ったのか)怪しんで老婆を捕らえようとしたので、老婆はわけを話します。その後、兵士は城門に(生け贄の)犬の血を塗りつけます(魔除けのための風習とも、単に老婆をおどかそうとしたとも解釈できるようです)。老婆は城門の血を見るとすぐに逃げ去ります。城は急に大水が出て水没しそうになります。
ここから先はシュールな展開になるのですが、役人が知事のところに城が水没しそうになっていることを報告に行きます。すると ――
知事: その方はなぜ魚になってしまったのだ
役人: 知事閣下も魚になっておられます
結局、城は沈んでしまい、あたりは湖になってしまいました、とさ。
『捜神記』の一部は以下で読むことができます:
- 中国怪奇小説集 捜神記(六朝) 岡本綺堂 [「亀の眼」に上記の話が出ています]
- 捜神記(上) [巻十三の第326話が上記の話に該当しています]
(続く)
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