桜島や箱根山の噴火警戒レベルが9月1日と11日に引き下げられたと思ったら、14日には阿蘇山が噴火して警戒レベルが「3(入山規制)」に引き上げられました:
この阿蘇山は、海外に伝えられた最初の日本の火山ではないでしょうか。中国の正史『隋書』は倭国(俀國)の風土・習俗などを記述したあと唐突に次のような文言を記載しています:
阿蘇山あり。その石、故なくして火起こり天に接する者、俗以て異となし、因って祷祭を行う。(『新訂 魏志倭人伝 他三篇 ― 中国正史日本伝(1)―』、石原道博、岩波文庫、1994)
富士山でもなければ、飛鳥・大和に向かう途中で必ず目にしたであろう世界最大の墳墓・大仙陵古墳(宮内庁によれば仁徳天皇陵)などでもなく、九州の阿蘇山を特筆したのはなぜでしょうか。隋帝国の領域には活火山がなかったため特に珍しかったということもあるかも知れませんが、これは隋と交流があった倭国が九州にあったことを示しているのかも知れません。
『隋書』は、倭国王が「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙なきや」という国書を送って隋の皇帝を怒らせたという故事が載っていることで有名です。定説ではこの国書を送ったのは大和朝廷の推古天皇や聖徳太子だということになっていますが、様々な矛盾や疑問点が指摘されています(例えば、推古天皇は女帝であるのに、倭国王には妻があり、「後宮に女六、七百人あり」と書かれていることなど)。
ここから九州王朝説に話が飛びます。
中国側の歴史書には、日本列島の支配権が倭国から日本へ移ったと受け取れる記述があります。
『隋書』の次の『旧唐書』では倭国と日本が別々に記述されています。倭国については「古(いにしえ)の倭奴国なり」とする一方、日本については「倭国の別種なり」と述べ、さらに「或いは云う、『日本、旧(ふる)くは小国なれども、倭国の地を合わせたり』」、つまり、小国だった日本が倭国を併合したと言う者もいると記しています。
唐側は日本からの使者の説明に納得していなかったようで、使者について「多くは自ら大を矜(ほこ)り、実を以て対(こた)えず。故に中国は焉(これ)を疑う」と書いています。
『旧唐書』に続く『新唐書』では、倭国に関する独立した記述は消えて日本に一本化され、「日本は、古の倭奴なり」として、神武から光孝に至る天皇の系譜を載せています。
以降の中国の正史も全て、日本または日本国として記述しています。
九州王朝説とは ―― 大和朝廷に先行して九州には卑弥呼の邪馬台国に連なる王朝が存在し日本列島の支配者として君臨していた。古くから中国に使者を送っており、中国側の歴史書に記録された倭国はこの九州王朝である。朝鮮半島への出兵を繰り返していたが663年の白村江の戦いで唐・新羅連合軍に大敗して衰退し、700年ごろに日本列島の支配権は近畿の大和朝廷に移った。大和朝廷は九州王朝の歴史を取り込んで太古より列島の支配者であったかのように自己の歴史を捏造した ―― というもので、最初に唱えたのは古田武彦氏です。学会からは無視されたり異端視されたりしていますが、日本列島の支配者は初めから近畿王家であるという定説にみられる様々な矛盾やモヤモヤをスッキリさせてくれる説です。
九州王朝説は古田氏以降、様々な人が修正したり自説を加えるなどして変化し様々なバリエーションができています。根拠の希薄な主張も加えられたりした結果、現時点でウィキペディアに見られる解説などは古田氏のオリジナルからはかなりかけ離れています。古田氏の九州王朝説を正確かつ簡潔にまとめたものとして、以下を紹介します:
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