2011年1月11日火曜日
「宇宙のお化け」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影
まず、下の記事にある写真(クリックすると拡大)をご覧ください。ギャラクシー・ズー・プロジェクトに参加して銀河の分類作業をしていた一般人が、2007年に発見した謎の天体です。不規則な形をしたスライム状の何かが、ぼんやりとした緑色の光を放っています:
ギャラクシー・ズー・プロジェクトは、インターネットを利用して一般からの参加者を募り、写真に撮影された膨大な数の銀河を整理・分類するプロジェクトです。「宇宙のお化け」は、このプロジェクトに参加していたオランダの高校教師 Hanny van Arkel さんが発見したもので、Hanny's Voorwerp と呼ばれています (Voorwerp はオランダ語; 英語では Hanny's Object)。
Hanny's Voorwerp は新種の天体である可能性があり、専門家が 「当初は、一体何なのかまったくわかりませんでした。太陽系内の天体なのか、それとももっと遠い宇宙の片隅に存在する天体なのかさえも、わかりませんでした。実際に観測してみても、やはりなぞの天体です」 と語るほど謎めいた天体です。
このほど、ハッブル宇宙望遠鏡がこの謎の天体に向けられ写真が撮影されました。以下は、公開された写真の数々です:
Hanny's Voorwerp のそばに写っている渦巻き銀河は IC 2497 で、地球から 6億 5千万光年の彼方にあります。Hanny's Voorwerp は、この銀河を取りまくように漂っている全長 30万光年におよぶ星間ガスの一部分が光っているもので、IC 2497 の核から 4万 4千~13万 6千光年の距離にあります。
IC 2497 の核は、かつてブラックホールをエネルギー源とするクエーサーとして強力なエネルギーを放っていましたが、天文学的にはつい最近(過去 20万年以内)、明るさが 100分の 1以下に落ち、通常の銀河の核のように見えるようになったと考えられています。このクエーサーの発するサーチライトのようなビーム状の光が Hanny's Voorwerp の方向に向いていたため、星間ガス中の酸素原子が励起され緑色の光を放っているのだそうです。
Hanny's Voorwerp には、大きな黒い孔がぽっかりと口を開けています。この孔の直径は 2万光年ほどあり、ハッブルの撮影した写真では、縁がかなりシャープです。この孔は、クエーサーのそばにある何らかの物体の影だと考えられています。