2014年10月20日月曜日

プレート間の摩擦熱でマグマ発生?


10月19日付「御嶽山噴火の次は? (補足-2)」で紹介した記事の中に、次のような記述がありました:
  • 「プレートがこすれ合い、摩擦熱でマグマが生まれる」 (武蔵野学院大学特任教授・島村英紀氏、引用元

  • 「プレートの沈み込んでいくスピードが上がり、その摩擦でプレートが溶けて大量のマグマになり大噴火を引き起こす」 (立命館大学歴史都市防災研究所教授・高橋学氏、引用元

2人とも火山学が専門ではなく、島村氏は地震学、高橋氏は地理学が専門のようです

先日のテレビ番組でも、御嶽山の噴火に関連して解説者が同様のことを言っていました。しかし、現在の火山学ではマグマの成因についてまったく別の考え方が主流になっています。以下は「火山学者に聞いてみよう -トピック編-」にある〝Question #2179〟に対する回答(東京大学地震研究所・安田敦氏)からの引用です:
以前にはプレート間の摩擦熱という説がありましたが,最近ではあまり重要視されていません. それは,仮に摩擦で多少温度が上がっても,こんどは高温になった部分の流動性が高まるので, 摩擦自体が小さくなってしまい,プレートの沈み込み帯でのマグマ生産に見合うだけの 十分な摩擦熱を生じさせるのか困難だと思われるからです.

最近では,水の存在によって岩石の融点が下げられているという説のほうが一般的 です. 地下の高い圧力のもとでは,水が豊富に存在すると岩石の融点は数百度も低下します. 地下100kmあたりのマントルの平均的温度は1300~1400度程度で,水が存在しない 場合には,マントルの岩石は融けることはありません.しかし沈み込んだ海洋プレー トから脱水によって大量の水が供給されると,岩石は容易に融けることができるのです.

以下には、マグマの成因についてもう少し詳しい説明があります:

マグマの成因を納得するには、深さ(≒圧力)の関数としての地温曲線と融解曲線(マグマができはじめる温度)の関係を理解する必要があります(参照グラフ)。通常は、どの深さでも地温曲線が融解曲線よりも低温側にあり、2つの曲線が交わることはありません。つまり、マントル物質が溶けてマグマになることはないわけです。しかし、条件が変化すると両曲線の関係が逆転してマントル物質が溶け始めます。

以下の書籍は、一般向けですが上記のようなマグマの形成過程や、マントルで発生したマグマがいかにして固体のマントルの中を上昇してくるのかについて、1章を費やして詳しく、かつ分かりやすく解説しています: