2023年10月14日土曜日

プシケとサイキ

 
10月13日10時19分(日本時間13日23時19分)、NASA の小惑星探査機 Psyche が スペースX社のファルコン・ヘビー・ロケットによってケネディ・スペース・センターから打ち上げられました。同探査機は 2029年8月に小惑星 Psyche を周回する軌道に入る予定となっています。この小惑星は直径が 279km あり、鉄とニッケルに富む「金属小惑星」で、これまで探査機が訪れたイトカワやリュウグウ、ベヌウ(ベンヌ)などとは全く異なった外観をしているのでは、と予想されています:
 
今回のミッションでは、探査機の名前と探査対象の小惑星の名前が同一の〝Psyche〟であるため、日本語の報道ではどのように扱われるか、以前から興味を持っていました。天文学の分野では小惑星の名前〝Psyche〟はギリシア語読みで「プシケ」と呼び習わされていますが、探査機の方は英語の発音に従って「サイキ」と書き分けられるのでしょうか。

ネット上で閲覧できる Psyche の打ち上げを伝える記事で、報道各社の違いを調べてみました。朝日新聞は記事が見つかりませんでした。毎日新聞は共同通信の記事の小惑星名を「サイキ」から「プシケ」に変更し、さらに独自の内容を付け足しています。産経新聞は共同通信が配信した内容をそのまま掲載しています:
 
  小惑星名 探査機名
朝日新聞
毎日新聞 プシケ
読売新聞 プシケ サイキ
産経新聞 サイキ
時事通信 プシケ サイキ
共同通信 サイキ
ナショナル・ジオグラフィック プシケ サイキ
 
 
こうしてみると、小惑星名を「サイキ」としているのは共同通信系の報道だけのようです。校閲がきちんとなされているメディアでは、小惑星名を天文学の用語として「プシケ」を採用しているようです。
 
欧米の言葉をカタカナにするときに、分野によって異なる表記になることはプシケ/サイキ以外にもあります。〝cuticula(cuticle)〟は生物学の分野では「クチクラ」、美容の分野では「キューティクル」ですし、人名の〝Hepburn〟はローマ字に関しては「ヘボン」、映画俳優の名前としては「ヘプバーン(ヘップバーン)」となります。