11月30日付「メイン州のカモメは嵐や地震を予知できるのか (その 1)」の続きです。
カモメなどの海鳥が地震の前に見せる行動について、『動物は地震を予知する』(ヘルムート・トリブッチ著、渡辺正訳、朝日選書、1985)から引用します:
チリ中央部にコンセプシオン[地図]という港町がある。この地の二月は、おだやかな好天が続く夏の月である[チリは南半球]。一八三五年二月二〇日も例外ではなかった。だがこの日には、古老も首をかしげたほど奇妙な出来事が起こった。午前一〇時ごろ、浜から内陸に向けて海鳥の大群が飛び去ったのである。天気がくずれる兆しは何もないのになぜ・・・・・・と人々はいぶかった。一時間四〇分後にその答がわかった。激震が発生して、コンセプシオンの町を廃墟にしてしまったのだ。一八二二年のチリ中部地震でも、また一八六八年イキケ地震でも、やはり揺れが来る前に海鳥が内陸へ向かって飛んだ。
著者のトリブッチ氏は、海鳥たちが飛び去った原因について、前震や微弱な音波が原因だとは考えにくい理由をあげた上で、次のように書いています:
地震の前に大地から発生した何かのシグナルを鳥たちが感知して、このとき彼らは嵐が近づいていると直感した。そして本能の命ずるままに、群れをなして、より安全な陸地の方へ避難したのだ。震前に目撃された動物の行動パターンは、悪天候の前の行動とそっくりなものが多い。
トリブッチ氏は本文や付録で非常に多くの事例をあげた上で次のように述べています:
こう見てくると、地震の前に動物たちは嵐の幻影を感じとるのではないか、と思わざるをえなくなる。(中略)なにか特別な「地震回避本能」が動物たちに備わっているとして、震前の動物行動を解説する人がいる。しかし、動物たちが進化の途上でそんな本能を発達させるほど、地震はひんぱんに起こりはしない。
トリブッチ氏は、帯電エアロゾル仮説の提唱者です。嵐や地震の前には大気中に帯電エアロゾルが増える、帯電エアロゾル(特にプラスに帯電したエアロゾル)は非常に強力な病理学的作用をもち、動物のパニック行動や人体の不調(セロトニン症候群)を引き起こす、としています。
(完)
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